受験にも知育にも興味ない 東大卒ママの育児日記

受験にも知育にも興味ないズボラな東大卒の二児の母が、おすすめの育児書や絵本を紹介したり、教育についての思いをつらつらと語ります

【おすすめ絵本】『しんせつなともだち』

しんせつなともだち』

作:ファン・イーチュン 絵:村山 知義

訳:君島 久子 出版社:福音館書店

 

 

冬の寒さと厳しさを感じながらも、心がほっこりと温まる絵本。「繰り返し」を通じて、小さな子供にストーリーを体感させるのにぴったりです。

《概要》

外は一面の雪でとても寒い。こうさぎは食べ物を探しに出かけて、かぶを2つも見つけました。1つは食べて、1つはお友達のろばさんに持っていこう。でも、ろばさんは食べ物を探しに出かけているので留守でした。こうさぎがそっと置いていったかぶを見つけたろばさんは、やっぱりお友達にあげよう、と思いついて、、、みんなが食べ物を分け合う優しさを持っていて、最後はなんと、こうさぎにかぶが戻ってきたのでした。

《おすすめタイプ》

読み聞かせるなら2、3歳から。動物好きな子にも。

《おすすめポイント》

これも昔からある定番で、日本図書館協会の認定も受けている絵本です。中国の作家、ファン・イーチュンさんの童話を元に、日本人の村山知義さんが絵を描いています。動物がたくさん出てきますが、『ちいさなねこ』みたいに、結構リアルなところが、動物好きにはウケると思います。現代の絵本みたいに、動物たちがキャラクター化されて表情豊かだったり、お家の中がカラフルな物に溢れていたり、というのとは全然違う。動物達は無表情だし、彼らのお家の中ははっきり言って、かなり粗末で殺風景です。でも、それがまた、現代には無い、何もない冬の厳しさを感じさせます。そういう、ある意味殺風景な感じの絵から、動物達がそれぞれみんな、お友達のことを思いやって、一つのかぶを運んでいく、というエピソードの温かさが際立ってくるんです。

ろばさんがさつまいもを、こやぎがはくさいを、こじかが青菜を見つけて、それぞれ自分の家に帰ってくると、かぶが置いてある。こういう同じパターンの繰り返しって、絵本にはよく出てきますよね。読んでる大人からすると、若干まどろっこしかったりするんですが(私です笑)。この絵本を読んでいて、小さい子供に物語を理解させるには、こういう<繰り返し>ってすごく大事なんだなあ、と気付かされました。

大人からすると単純過ぎるくらいのこの絵本のストーリーなんですが、小さい子供にとっては、実は結構難しい。試しに、2、3歳の子供に読んであげてみてください。一度目だと、最後の最後でこうさぎのところに戻ってきたかぶは、最初にこうさぎが取ってきたかぶなんだよ!ってことが、すぐに理解できないのではないでしょうか。小さい子供は、瞬間瞬間、目の前の出来事に反応して生きてますから、たった数ページでも、絵本の初めと終わりが繋がる、というストーリー性を理解するのが意外と難しい。だからこそ、こういう<繰り返し>に意味があるんだと思います。

今の子供向けのアニメ映画なんかを見ると、ものすごく展開が早くて、びっくりしてしまいます。小さな子供を飽きさせないように、という工夫なのは分かりますが、ディズニー映画なんかも、こんなスピード感で本当に子供は理解できるのかしら?と思ってしまいます。

ネットのおかげで、情報化・スピード化が進み、エンターテイメントも、どんどん細切れの、集中力を伴わない類のものに変わっていくなあ、と思います。そういう「今」に生きるセンスも大事だと思うのですが、子供はあっという間に新しいものには慣れて身につけてしまいます。だからこそ、小さい頃は、こんな昔ながらのゆったりした<繰り返し>を楽しむ経験もさせてあげたいなあ、と思うのです。<繰り返し>を通じて物語を頭で理解するのではなく、体感していくようなゆとりある時間。お母さんやお父さんと一緒に絵本を楽しむ大切な時間の意味じゃないかな、と思います。

 

【おすすめ絵本】『りんごかもしれない』

りんごかもしれない』

作:ヨシタケシンスケ 出版社:ブロンズ新社

 

 

 

子供が食いつく、新しいナンセンス絵本の決定版。でも、本当はナンセンスだけじゃない深さがあります。

《概要》

テーブルの上に置いてある一つのリンゴ。見た目は普通のリンゴ。でも、もしかしたら、ただのリンゴじゃないのかもしれない。大きなサクランボの一部とか?実は何かのタマゴとか?いやいや、表面に小さな宇宙人が住んでいるのかも?もし、このリンゴに気持ちがあったら、、、想像はどんどん膨らんで、そんなのあり得ない!?というところまで世界が広がっていきます。

《おすすめタイプ》

4、5歳ぐらいから。自分で字が読めるようになると、さらに楽しめます。男の子は大好物だと思いますが、女の子にも、是非読んでほしい。

《おすすめポイント》

ヨシタケシンスケさんは、筑波大学大学院の芸術研究科を卒業し、スケッチや広告美術などで活躍されてきましたが、初めて出版した本書が大ヒットし、今では大人気の絵本作家さんになりましたね。

私も比較的最近知ったのですが、他の絵本も面白い。でも、やっぱりこのデビュー作に、ヨシタケシンスケさんの絵本の面白さが凝縮されているな、と思います。テーブルに置かれた一個のりんごから、想像、というより妄想、に近いような世界が広がっていきます。

それが、ちょっと普通の大人で考えつかないようなイマジネーションだし、全く教条的でない、というか、かなりくだらなくてナンセンスなところが、子供にはバカウケ。絵もユーモラスで面白いし、結構シュールな笑いも隠されていて、読みながら大人も笑ってしまいます。

私的には、『キャベツくん』の長新太に次ぐ、ナンセンス絵本の新王者現る!と密かに思っています。

大人も読めるナンセンス絵本の面白さは、くだらないだけじゃなくて、どこか皮肉とか現実世界への批判的な要素が隠されているところ。この『りんごかもしれない』で言えば、「一見、普通のりんごにしか見えないものも、本当はそうじゃない可能性があるよ!」ってことですよね。誰もが当たり前だと思うこと、見えてるだけだと普通に見えること、もしかしたらその陰に、とんでもない秘密が、可能性があるのかもしれない。だから、子供が楽しんだ後に、これも本当にただの○○なのかな〜?なんて、想像して楽しむ「広がり」が生まれます。(全部それをやられたら親はたまったもんじゃないけどね)

物事は、今そこに見えてるだけの姿だとは限らない。ちょっと違う角度でものを見たり考えたりするだけで、世界の可能性は無限大に広がっていくのです。ネットやテレビで見かけた情報を鵜呑みにして、条件反射のごとく騒いだり右往左往しているような今の大人の方が、この絵本を本当に必要としているのかもしれませんね。自戒を込めつつ、、、

 

 

【教育本・教養本】 『学力の経済学』

 

 

教育書と経済書の中間的な位置付けとして話題になっており、参考になるかな、と思って読んでみた。読んだ感想としては、うーん、、、教育現場に携わる方や教育政策に興味がある人には良いと思うが、親が子育ての参考として読むにはどうなんでしょう、、、という感じ。

至極当たり前のことを言うと、「学力」というのは、子供の「生きる力」とは全く違う。そもそも「頭の良さ」とすらさほど関係がない。「経済力」にも直結しない。その前提で「学力」を伸ばしたい、と親が思うならそれはなぜなのか、きちんと整理できた上でこういう本を読まないと、とても危険な気がするのだ。しかし、自分も含めて、このあたりをきっちり整理して考えられる親というのは極めて少ないように思う。「学力」と「経済力」と「頭の良さ」は、全く関係がない、とまでは言えないし、だからこそ親としてはそれらが渾然一体として捉えられたまま、とりあえず目先の「学力」という指標に気を取られてしまう。

事実、この本も、前半は「学力」に限定して語っているのだが、途中から「非認知能力」に話が切り替わる。学力については、小学校高学年以上の子供を対象とした方が適切だと思うが、「非認知能力」については、幼少期から育むべきものだろう。そういう意味では、子供を教育する親からすると、子供の年代は非常に重要だと思うのだが、その辺りはランダムに語られている。

例えば、この本が打ち破る「教育神話」の一つとして、「褒めて育てる」のが本当に良いか、という問題がある。著者は、フロリダ州立大学のバウマイスター教授やバージニア連邦大学のフォーサイス教授らの研究結果を例に挙げ、《学生の自尊心を高めるような介入は、学生たちの成績を決してよくすることはない》ので《むやみやたらに子どもをほめると、実力が伴わないナルシストを育てることになりかねません》と主張している。

しかし、この試験で対象となっているのは、高校生や大学生でなのである。そもそも「親が褒める」ことが、自尊心を高めることに大きな影響を及ぼす年頃とは思えない。一般的な親が「褒めて育てる」効果を期待するような歳ではないので、なんとなく想定しているケースがずれている感が拭えないのだが、こういう子育てする親の想定とは微妙にズレた「データ検証」がこの本では多く出てくるのだ。

もう一つ、インパクトを与えやすい例として、「幼児教育は収益率が高い」というものがある。アメリカ・ミシガン州の「ペリー幼稚園プログラム」で、低所得のアフリカ系米国人の3〜4歳の子供たちを対象とした実験結果が挙げられている。

このような実験結果は、社会政策を考える上ではとても重要で意義があると思うが、例えば、この本を読んでいるような比較的教育熱心な日本の一親が「なるほど!」と手を打ちたくなるような検証結果ではないように思う。当たり前だが、3〜4歳児への教育とは「学力」アップの教育ではない。そのことは、著者もさすがに認めている。だとすると、「幼児教育」とは何を指すのか。幼児期に高めるべき「非認知能力」のスコープはあまりに広い。コミュニケーション力、安定した精神力や集中力、自制心や創造性、それら全部を高める「幼児教育」の具体的イメージを持てる親がどれだけいるだろうか。そしてまた、高校失業率や40歳時点での所得やIQが平均より高い、ということが、現在の日本にいる親として目指す収益率なのか、ということも自問する必要がある。

この本のあとがきで、講演会に来ていた小さな子供連れのお母さんから「話が聞けて良かった。知らなかったらヤバかったわ」と声をかけられたエピソードが紹介されていたが、そのお母さんはちゃんとこういうことを自分の中で整理した上で理解できていたのだろうか。もしそうでなくて、いろんなものが渾然一体となったまま、この本で挙げられている実験結果を鵜呑みにしていたとしたら、その方がよっぽど「ヤバかった」気がするのだが、、、余計なお世話だが、「やっぱり幼児教育にお金をかけるのが一番良いのね!」と、よく分からない習い事漬けの毎日で親子共々疲労困憊したり、無理して有名私立幼稚園をお受験して、家計に過大な負担をかけたり、頓珍漢な結果になっていないよう願うばかりである。

 

現代の「学力」が、最終学歴に到達するための力とするならば、それは限定的なステータスと大企業に良い条件で就職するための指標でしかない。「頭の良さ」は全く関係無いとは言わないが、「暗記力」と「情報処理能力」と「ルール認知能力」が勝負なので、効率的に且つ時間をかけて習得すれば、殆どの人が一流大学に合格できるだろう。特に、繰り返し時間をかければ受験で点を稼ぐ力は確実にアップする。ただ、多くの人は、そこまで時間をかけたくもないし、かけるモチベーションが続かないだけだ。家庭も含め、周囲の環境によって勉強に時間をかけるのが当たり前で、且つ、中高一貫校のように、効率的に受験勉強に時間を費やせば(高校入学から1年生の前半までに、高校3年生までのカリキュラムを終えて、残りの2〜3年間は大学受験のスキアップに集中する、というような)、誇張でもなんでもなく、並の頭の良さの人なら東大に合格できる。

そういう前提を踏まえた上で、親が子供に学力を身に付けさせたいのなら、なぜそう思うのか、もっとしっかり自分の中で整理した方がいい。将来の経済力の為に、というのは一つの分かりやすい答えだが、その場合は、「学力」=「経済力」ではなく「経済力の一助」にしか過ぎないこともはっきり認識しておく必要がある。この本でも言っている通り、

「高校を卒業後すぐに働き始めた人と、大学を卒業してから働き始めた人の間では、生涯で稼げるお金に、実に一億円の差があります。一億円を年末ジャンボ宝くじで当てようとすれば、その確率は1000万分の1です。交通事故で亡くなる確率が一万分の1、飛行機で事故にあう確率が20万分の1といわれている中、これは、ほとんど不可能といってよいレベルでしょう。しかし、宝くじで1億円が当たることを夢見なくても、大学へ行けば生涯で稼げるお金は1億円高くなるのですよ。」

 

確率論で言えば、まず学力を上げて出来るだけ良い大学に行く、というのが経済力アップの為の最も着実で一般的な方法、ということになろう。しかし、これもまたあくまで一般的な確率の話なので、高卒や中卒でその一億差を埋める収入を得ている確率は、宝くじの当選確率とは比較にならないくらい高いであろうし、そもそも、その一億の収入差で子供の将来は安泰なのか、大卒の中でも収入にはかなり差があるのではないか、だとしたらどのレベルの大学や企業に入ることを目標とすれば良いのか、また、今のこのデータ上の収入差は子供が成人するまで続いていくのか、などと疑問が次々沸いてくる。

もちろん、根本的なところで、経済力のみがその子供の幸不幸を左右するわけではないし、生きるのに必要な力は別のところにもある、という問題もある。言うまでもなく、子供が「経済力さえつけてくれれば不幸になっても構わない」とか、「いい大学に合格してくれさえすれば、その後自殺しても病気になっても構わない」とか思っている親はいないわけで(多分)、学力は経済力の一助にしかならないと同時に、経済力もまた幸福になる為の一助にしかならない。そうやって考えていくと、子供の教育における学力のポーションをどの程度におくべきなのか、悩ましいところである。こういうことを全て踏まえて自分の中できちんとした答えがある親が、果たしてどれだけいるだろうか。

 

 

 

【おすすめ絵本】 『すてきな三にんぐみ』

すてきな三にんぐみ

作:トミー・アンゲラー 訳:いまえ よしとも 出版社:偕成社

 

 

 

コントラストの美しさが際立つ印象的な絵。ちょっと怖いけど素敵な3人組に、考えさせられるお話です。

《概要》

黒いマントに黒い帽子の3人組は、こわーい泥棒。夜な夜な強盗をしています。ある晩、いつものように馬車に押し入ると、そこには孤児の女の子が一人。3人組は女の子を大事に抱えて隠れ家に戻り、女の子に言われて、奪った宝でお城を買い、国中の孤児を集めることに、、、

《おすすめタイプ》

4、5歳くらいから。全文ひらがなですので、文字を覚え始めた子供の読みはじめにも良いです。

《おすすめポイント》

定番中の定番ですが、とってもお気に入りの絵本です。フランス人絵本作家トミー・アンゲラーの代表作。

絵本のもつ「絵の力」を感じさせてくれる本です。イラストレーターとしても有名なアンゲラー、濃い青の背景の中に、黒の泥棒の影が浮かぶ全体像の中に、黄色の月や、朱色のマサカリのコントラストが見事。三にんの泥棒の山高ぼうや、それに似せた建物の屋根など、フォルムの面白さも楽しめます。三にんのどろぼうは、目しか見えないのでその表情や感情は殆ど読み取れないのだけれど、孤児のティファニーちゃんを運ぶその時だけは、すごく大事に慈しむように抱えているのが伝わってきて、表現力がすごいなあ、と感心します。

絵の素晴らしさに目がいきがちですが、お話の内容がちょっと考えさせられるのもこの絵本の良いところ。三にんのどろぼうは、前半は凶悪な強盗犯に見えるのに、ティファニーちゃんを連れて帰ってからは一転、国中の可哀想な孤児を引き取って育ててあげます。その資金源になったのは、今まで人から奪ってきたお宝、、、これっていいこと?悪いこと?すてきな三にんぐみって、そもそもいい人なの?悪い人なの?少し大きくなった子どもならそういうかもしれません。

この答えはほんと難しい〜ですね。お父さんもお母さんも、答えられないかもしれません。でも、子どもにとって、その「わりきれなさ」も時には大切かな、と思います。強盗犯が盗んだお金で慈善事業をする、とか、それをいいことに国中から孤児が集まってくる、とか、この辺りはフランス人らしいシニカルさというか、社会批判的な視点も盛り込まれているなあ、と思います。確かに、泥棒はいけないことなのだけど、国中の見捨てられた孤児というもう一つの「社会悪」は、一体どうするべきなのか、、、今の日本だって「赤ちゃんポスト」というのがあるのよ、なんて話もしてみたり。

デザインのセンスだけでなく、「この世界は一筋縄ではいかないのかも」というちょっと複雑な感情も刺激される。「とっかかり」と「広がり」のバランスが素晴らしい名作だと思います。

【おすすめ絵本】 『フランクリンの空とぶ本やさん』

フランクリンの空とぶ本やさん』

文:ジェン・キャンベル 絵:ケイティ・ハーネット 

訳:横山 和江  出版社:BL出版

 

 

 

読めばきっとみんな本が大好きになる。懐かしさと新しさの混じった現代の名作絵本。

《概要》

ドラゴンのフランクリンは本が大好き。本を読んであげるのが大好きなので、町の人にも読んでもらいたい、と思っていますが、大人たちはドラゴンの姿を怖がって逃げてしまいます。ところがある日、一人の女の子が現れて友達になり、一緒に町の広場へ。最初は怖がっていた大人たちも、女の子に説得されて、いつしかみんなフランクリンの背中に乗っていました。

《おすすめタイプ》

読んであげるなら4、5歳から。小学生低学年でも楽しめます。動物好き、ドラゴン好き、本好きの子。男の子女の子どちらもおすすめ。

《おすすめポイント》

2018年初版という新しい絵本です。ある日、上の娘が「これ、きっとママが好きだと思って借りてきた」と、小学校の図書室から借りてきてくれました。もうその通り、ビンゴ!です。たちまちフランクリンの魅力の虜になり、ネットで買い求めてしまいました。子どもが一緒に絵本を読んでいるうちに、母親の趣味が分かってきたのもなんだか嬉しい。

とにかく絵が素敵。イラストレーターのケイティ・ハーネットは、ボローニャ国際絵本原画展で何度も入選しています。淡い色調、可愛らしい動物やドラゴン、家の中や町の様子も細やかに描かれています。伝統的な絵画風のタッチと、現代アート風のデザインが見事にミックスされています。

お話の中身も、ドラゴンやアーサー王物語やバイキングが出てきたと思ったら、電動ミキサーのお菓子の作り方やカモミールティーやクレームブリュレも登場。古き良きものと新しい今風のものとが絶妙にマッチしています。ドラゴンに乗る、というのは昔からお伽話にもよく出てくるパターンですが、そこにソファと本棚を据えて本屋さんにしてしまう、と言うのがまた斬新。ネズミたちが楽しい音楽を演奏し、女の子のルナがケーキを配って、なんだか今流行りの素敵なブックカフェ風な演出が楽しい。物語ばかりではなくて、実用書や漫画までカバーしているところも、今風のブックカフェを連想させます。

ドラゴンのフランクリンは、『エルマーのぼうけん』のボリスに匹敵する、絵本界きっての魅力的なドラゴンだと思います。(ボリスも可愛いけどね)本が好きな人なら誰でも、フランクリンのお話を聞きたい、そして、フランクリンの背中で本を読みたい!という気持ちになるはず。正直、子どもが気に入っても気に入らなくても、自己満足の為に持っておきたいくらい大好きな本です(笑)でも、子どものお気に入り、だけでなく、ママのお気に入り、もあってもいいと思いませんか?ママが心から絵本を読むのを楽しみにしていたら、子どももきっとママと一緒に絵本を読む時間がさらに大好きになると思いますよ。

【おすすめ絵本】 『ピーターのいす』

ピーターのいす』

作:E=ジャック=キーツ  訳:きじま はじめ  出版社:偕成社

 

 

初めて弟妹ができた子供に是非読んで欲しい。コラージュによる色彩、質感も子供の目を惹きます。

《概要》

妹が生まれたばかりのピーターはなんだか面白くない。お母さんから静かにして、と言われたり、自分の食堂いすやゆりかごもピンク色に塗られてしまったり。ピーターは、まだ残っている小さないすを持って犬のウィリーと家出しようと思います。おや!でも、いすが小さ過ぎてピーターは座れません。大きくなったピーターは、お家に帰って、お父さんと一緒にいすをピンクに塗るお手伝いをしてあげるのでした。

《おすすめタイプ》

2歳後半から3歳くらいから。弟妹ができた子供にはぴったりです。下の子供にも、お兄ちゃんお姉ちゃんの気持ちが想像できるような歳になってから、読んであげたい。

《おすすめポイント》

小さな子供にとって、下の弟や妹が生まれる、というのは短い人生で最大の出来事です。とっても嬉しいけれど、今まで独り占めしていたお母さんやお父さんの愛情が奪われてしまったように感じたり、心は複雑。そんな初めてお兄ちゃんお姉ちゃんになった子供を描いた絵本もたくさんありますよね。瀧村有子さん作の『ちょっとだけ』なんて名作もあります。

この『ピーターのいす』は、まだ自分でもはっきり言葉にはできないくらい小さなお兄ちゃんお姉ちゃんたちの心に寄り添うように、その心情を言葉では語り過ぎずに描いているところがとても良いんです。

得意になって積み木を作っていたら注意されてしまったり(今までだったらお母さんに褒めてもらえていたかもしれません)、自分の食堂いすやゆりかごが妹用にピンク色に塗られていたり(もう見向きもしなかったけれど、断りもなく取り上げられたような気持ちになってしまったり)。なんとなく面白くなくて、もう使えないくらい小さないすと自分の赤ちゃんの写真を持って家出してやる!って気持ちになってしまう。でも、だからと言って深刻なわけではなくて、隠れてお母さんをびっくりさせるのが成功したら大満足!自分はいすに座れないくらい大きくなっているし、お母さんをびっくりさせられるくらい成長したんだ!と、気持ちが切り替わるところなんかも、小さな子供の心情をよく捉えているなあ、と思います。

この絵本はコラージュ(貼り絵)でできていて、色彩や質感がちょっと変わっているのも子供の目を引きつけます。レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』などでも触れたように、特に小さい子供には、アニメ的な絵だけではなくて、質感があるものがウケます。綺麗なアニメーションやどぎつい色彩に取り囲まれている現代っ子こそ、絵本を通じて、色々な色調や質感の絵に触れさせたいですね。

E=ジャック=キーツは、ニューヨークの下町生まれの絵本作家です。ピーターも有色人種で下町育ち。他のピーターシリーズでは、もっとニューヨークの下町の様子がはっきりと出てくるものもあります。自分とは違う国、人種、街の様子など、小さな子供の目は敏感に様子を捉え、印象に残しているものです。まずは絵本から、多様な世界を体験させてあげたいなあ、と思い、本を選ぶようにしています。

 

 

「モンテッソーリ×オクスフォードのほめ方・叱り方」の本を参考に子どもと家族会議をした結果がすごかった

『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリオ教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る自分でできる子に育つ ほめ方・叱り方』の記事で少し触れましたが、この本やボーク重子さんの本を参考にして、我が家では「どうしたらママに怒られないか会議」なるものを実施しました!!

この効果が予想以上にすごかったのでご報告しますね。

「どうしたらママに怒られないか会議」なんて言うと、私がしょっちゅう怒ってるみたいですが、そんなことないんですっ(多分)!怒る大半の理由は「テレビやゲームをやめなさいと言ってもすぐにやめない」というものです。まあ、こんなことだけが怒る理由なんて、うちの子ったらなんて良い子なんでしょうね〜♪(親バカ)

で、母親としては大して怒ってないつもりだし、正直、これくらいのこと、子どもなら注意されて当たり前だろ、と内心思っているのですが、子ども達は「ママはすぐ怒る」とかなり気にしている様子。なので、読んだ本を参考にしてみよう、と思ったわけです。

まあ、私自身、そこまで深刻に捉えているわけではないので、ちょっと効果があればいいな、程度の軽い気持ちで、「どうしたらママに怒られないか会議をやろう!」と子どもに提案しました。子ども達も、「会議」という響きに興味津々。上の娘を「書記」に任命して、なんかイベント感を出してみました(笑)

 

私の中では、家族会議のポイントを以下の2つに絞りました。

  • 子どもが怒られる理由、どうしていけないかをしっかり説明する
  • その上で、どうしたら良いかを子ども自身に考えさせて提案させる

まず、どうしていけないかをしっかり説明しました。うちは、テレビやゲームには割と肯定的で、今ではテレビやゲームから学べることもたくさんあるので、それ自体はあんまり気にしていません。ただ

  • 長時間やると目が悪くなるから
  • 長時間やると寝る時間が遅くなって、寝不足になり、病気になるから
  • ご飯や出かける時間まで食い込むと、他の家族に迷惑がかかるから

と言う理由をちゃんと説明。モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリオ教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る自分でできる子に育つ ほめ方・叱り方』で、ほめる時も叱る時も「プロセスを大事にする」と書かれていました。

叱るたびに、理由も言ってるつもりだったですが、子どもは怒られながら言われると、怒られることの方に意識が行ってしまって、それ以外のことを殆ど聞いていないんですね。切れ切れの説明を感情的な状態で聞かされても、殆ど理解できない。なので、こういうお互いに落ち着いた状態で、時間をかけて理由を説明する、と言うことだけでも、とても意味があるな、と思いました。

で、原因を理解した上で「どうしたらいいと思う?」と子どもたちに自分で考えさせるよう、意見を聞きました。これも、『「全米最優秀女子高生」を育てた教育法 世界最高の子育て』で、自分で考えられる力をつけるために、「あなたならどうする?」とか「イエス、ノーでは答えられない質問」を幼少期からできるだけたくさんすると言う言葉に触発されたからです。まあ、特に下の子はまだ6歳になったばかりで、まだ理論的な対策を考えられる訓練をしてないので、その辺は多少母が誘導尋問した面もありますが、、、重要なのは

  • 子どもに自分で考えさせる機会を与える
  • 自分の意見が反映されたと納得させる

ということなのではないでしょうか。

で、結局、子どもと相談しながら、ルールを決めました。

  • テレビやゲームの時間を決める(一人平日1時間、休日1時間半)
  • ご飯や出かける時間がある時には、前もってママが何時まで、と早めに言う(そういう時は、途中でもやめる)

ルールと言ってもこれだけです。まあ正直、こんなの決めても大して守らないだろうなあ、子どもだし、、、、と内心思いつつ。

しかし、思った以上に効果が絶大で。3週間経った今でも、テレビやゲームのことで母が怒ることは一切無くなりました!!これには、会議を提案した私自身もちょっとびっくり。実際、ルールを決める前の方が、テレビやゲームの時間が長くて、ルールで決めた時間は短めだし守れないだろう、とタカを括っていたのですが、、、ちゃーんと、決めた時間を守って文句を言わずにテレビやゲームをおしまいにしてくれます。

上の子は3年生なので、できるだけ時計を確認しながら「今何時?」「今○時○分だから1時間半後は何時何分かな?」「今40分テレビ観たから、残りはあと何分ゲームできるかな?」と時間計算のトレーニングをするのにも役立ってます。お小遣いの計算させた時もそうだったのですが、自分の利益に関わることだと、子どもも一生懸命頭を使うので、苦手な計算も頑張ってこなすうちに自然と力がつくみたいです(笑)

と言っても、時間管理をめちゃくちゃ正確にやってるわけではなく、元々設定時間を短めにしてますから、多少のズレは気にしません。10、20分オーバーしても、子どもがキリの良さそうなところでやめるように促すことにしてます。それでも、「もうやめなさい!」と突然親が言い出した時間ではなく、ルールの時間をオーバーしてる、となると、子どもも素直に「もうおしまいにしよう」となるようです。

まあ、子どものことなので、この平和がいつまで続くか分かりませんが、、、昨日も、上の娘が小学校のお友達にこのルールのことを話したら「テレビやゲームの時間短いね」って言われたそうです(笑)そろそろ、時間延長を交渉されそうな予感もします。

それでも、子どもが叱られる理由を理解して、自分でルールを決めて実行した、という経験はとても大事だったな、と思います。もちろん、親からすれば、叱る方が精神的に疲れるので、自主的に子どもがやってくれればそれに越したことはありません。育児書を参考にして良かったな、と思ったことの一つです。