受験にも知育にも興味ない 東大卒ママの育児日記

受験にも知育にも興味ないズボラな東大卒の二児の母が、おすすめの育児書や絵本を紹介したり、教育についての思いをつらつらと語ります

【おすすめ絵本】 『しろいうさぎとくろいうさぎ』

しろいうさぎとくろいうさぎ

文・絵:ガース・ウィリアムズ  訳:まつおかきょうこ

出版社:福音館書店

 

 

個人的に一番好きなとっておきの絵本です。絵の美しさ,うさぎの可愛いらしさ,文章,ストーリー何度も読んでいろんな角度から味わいたい絵本

《概要》

しろいうさぎとくろいうさぎは二匹で楽しく暮らしています。ある日、いつものようにうまとびしたり、ひなぎくとびをしたり、かくれんぼをしたり、楽しく過ごしている最中、くろいうさぎだけが何か考え込んでいて元気がありません。しろいうさぎがどうしたの?と聞くと、やっとくろいうさぎは答えます。「いつも、いつまでも、きみといっしょにいられますように」そんなこと考えたことのなかったしろいうさぎはびっくり!でも、しろいうさぎだって気持ちは一緒なんです。

《おすすめタイプ》

絵を中心に楽しむなら3歳くらいから。読み聞かせで内容を楽しむには4、5歳くらい。自分で読めるようになってから読む本としてもおすすめです。

《おすすめポイント》

今までおすすめ絵本を紹介してきたのも30冊を超えました。紹介したものはどれも本当に大好きなものばかりなのですが,私が本当に一番大好きな絵本はどれかと言われれば、これです。

国学図書館協議会日本図書館協会はもちろん,いろんなところから選定図書として選ばれている定番中の定番です。今まで敢えて紹介してこなかったのは、母親になってから読み聞かせる、という観点から選んだのではなくて、本当に私が子供の頃に一番好きだった絵本だから。でも、やっぱりいいものはいいし、親になった目で読み返しても素敵だな、と思うので紹介することにしました。

何が大好きだったかって、とにかく絵です。もう二匹のうさぎが可愛いのなんのって、子供心にもそれが強く印象に残っています。ぬいぐるみや動物好きな子どもであれば、それだけでとっかかりには十分なのではないでしょうか。目をまん丸くした時の表情、くろいうさぎの考え込んでいる様子、二匹で楽しく遊んでいる姿。うさぎのふわふわした毛、淡い色調で描かれた森や原っぱ、遠景と近景、可愛らしさとリアリティが絶妙にミックスされていて、どのページを切り取っても素晴らしいの一言。

どうしてこの絵がこんなに好きなのかは分かりません。小さい頃一番大好きだったこの絵本の絵を描いていたガース・ウィリアムズが、私の読書好きの大元となったローラ・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』(福音館文庫版)の挿絵を描いていたのだ、と知ったのはずっと後のことです。もちろん、ワイルダーの文章と恩地三保子さんの翻訳が素晴らしかったから夢中になって読んだのだけれど、潜在的にガース・ウィリアムズの挿絵も影響していたのかな、なんて思いました。

個人的に絵のことばかりになりましたが、もちろん、文章もお話もとても良いのです。大人になってから読んでみると、全てのセリフに「くろいうさぎはいいました」とか「しろいうさぎはききました」といった文章がついていて、小さな子どもにも分かりやすい、ゆるやかなテンポで話が進んでいくのも良いなあ、と気づきました。

少しまどろっこしいくらいですが、いつもの遊びと暮らしを一つ一つなぞりながら、そのたびに考え込んでしまうくろいうさぎの様子が、子どもの心に少しずつ刻まれていくんですよね。いつもの暮らしがとても充実して楽しければ楽しいほど、「ずっとこのままいれるんだろうか」「この幸せを失いたくない」と不安になってしまう、そんな複雑な心理も実によく表しているなあ、と感心してしまいます。

ひなぎくとび」「クローバーくぐり」「きんぽうけ」「どんぐりさがし」といった言葉、「あさのひかりのなかへ、とびだしていきました」「しろいうさぎは、やわらかなしろいてをさしのべました」といった少し古風な美しい言い回しも素敵です。

それから、今になって読んでみると、「けっこんしてしあわせにくらしました」というおとぎ話の典型的要素に、ジェンダー色が全く感じられないのも魅力のひとつだと思います。日本語訳だと、どうしても一人称の関係から」くろいうさぎ=僕=男の子」「しろいうさぎ=わたし=女の子」という図式が透けて見えますが、元々の英語「I」だけだったら、どちらがオスとかメスとか、全く分からないですよね。結婚しても二匹は一緒にたんぽぽを食べたり、ひなぎくとびをしたりして楽しく暮らすだけ。そこに妙なジェンダー的役割分担は介在しません。大好きなパートナーと一緒にいつまでもいたい、その気持ちがあるだけ。そのシンプルさが、実はとても貴重だな、と思うのです。

【おすすめ絵本】 『3びきのかわいいオオカミ』

3びきのかわいいオオカミ』

文:ユージーン・トリビザス  絵:ヘレン・オクセンバリー

訳:こだま ともこ 出版社:冨山房

 

 

小さい子供でもパロディ」がもつ面白さを実感できる新しい名作です。

《概要》

3びきのかわいいオオカミは、お母さんに言われて家を建てます。3びきで協力して、頑丈なレンガのお家を建てれば、わるいおおブタだって怖くない!ほら、わるいおおブタが息を吹きかけてもびくともしません、、、ところが!わるいおおブタはなんと、ハンマーを持ってきてレンガの家をめちゃくちゃに壊してしまいます!コンクリートの家を建てても電気ドリルで、鉄筋コンクリートの頑丈な家を建ててもダイナマイトで壊されてしまいます。どうしたらいいんだろう?オオカミたちは、全然違うものでお家を建てることにしました。そしたらあら不思議、こわーいおおブタが、、、

《おすすめタイプ》

 「3びきのこぶた」の筋を理解している子。5歳くらいから。動物がたくさん出てくるので動物好きな子にも。派手なドリルやダイナマイトなんかも出てくるので、ゲームや戦隊好きな男の子も楽しめます。

《おすすめポイント》

これも、子どもが「学校で読んで面白かったから」と紹介してくれた本です。全国学図書館協議会日本図書館協会の選定図書に選ばれていますが、日本の初版は1994年ですので、ママ達が子どもの頃にはまだあまり知られていなかった絵本ですね。

概要を読んでお気づきの通り、これはズバリ、有名な『3びきのこぶた』のパロディです。『3びきのこぶた』は、保育園や幼稚園でも劇やペープサートで何かと取り上げられるので、子どもたちには絶対お馴染みのストーリー。この絵本のすごいところは、その小さい子供がよく知っている物語に目をつけて、「パロディのもつ面白さ」を体験できるようになっていることだと思います。

のっけから、かわいいオオカミがこわいブタに気をつけなきゃ、なんて、「あれ!逆じゃない!?」と、おかしな感じ。そして、オオカミたちはこぶたと違って最初から頑丈なレンガのお家を作り始める。「それじゃブタが来ても家が壊れないよ、どうするんだろう?」と読んでもらう子どもたちも興味津々。

で、そこで、まさかのブタがハンマーでレンガの家をぶっ壊してしまうシーン!これは、読んでいるママも衝撃的でした(笑)もうここで子どもたちは大ウケ。そこだけ取り出したら笑えないと言うか、怖がってしまいそうなシーンですが、なぜこんなにウケるかと言えば、それは、子ども達の頭の中に『3びきのこぶた』の「レンガのおうちは大丈夫」という筋が刻み込まれているから。その筋通りにいかない!という意外さ=「パロディの面白さ」があるからこその面白さなわけです。

その後も、これでもかと頑丈な家を建てるオオカミくん達に対し、ブタが取り出すのは電気ドリルにダイナマイト。とにかくこのブタが「極悪」なんです。もうね、出てきた瞬間から面構えがワルイワルイ。絵本史上稀にみる極悪ブタだと思います(笑)それがまた、『3びきのこぶた』との対比で余計に笑えるんですけど。

最後は「頑丈な家を建てる」方向に頑張るのではなく、発想の転換をする!と言うのも面白いところです。ここでも『3びきのこぶた』の常識を覆すわけですよね。で、極悪のブタが、お花の家の香りと美しさに急に可愛くなって踊り出す、というチグハグさも笑えます。

とにかく、これを初めて寝る前に読んだ時には子ども達が笑って興奮し過ぎてしまい、『ブタヤマさんたらブタヤマさん』以来の「寝る前に読んではいけない本」に認定されました。でも、子どもがそれだけ笑ってしまうのは、なんといってもそこに「パロディの面白さ」があるからで、そこは「広がり」がある重要な部分だと思います。

何度も言うように、『3びきのこぶた』のストーリーがポイントなので、子どもがそれを余り意識していないようだったら、「あれ、オオカミがブタを怖がってるなんて反対だね」とか「レンガのお家だったら壊れないはずだよね」とか、読みながらママが言ってあげてはどうでしょうか。読んでもらう子どもたちの面白さが増すと思いますよ。

【おすすめ絵本】 『数ってどこまでかぞえられる?グーグルのもとになったことば』

数ってどこまでかぞえられる?グーグルのもとになったことば』

作:ロバート・E・ウェルズ 訳:せなあいこ 出版社:評論社

 

 

《概要》

1本のバナナから始まって、1に0をひとつつけたら10になる。バナナが100本、ワシが100羽、100匹のペンギンがそれぞれ10個のアイスを持っていたらどう?天文学的数字の「グーゴル」に届くまで、ユニークで自由な想像力を楽しみながら、10進法と大きな数のイメージが学べます。

《おすすめタイプ》

内容は少し難しいので最低でも5歳くらいから。数に興味を持ち始めたり、算数を習い始めた頃に読むのがおすすめ

《おすすめポイント》

理系脳、文系脳、というのが科学的にどこまで証明できるものなのか、専門的な知識は全くないのですが、とにかく私は骨の髄まで文系タイプを自認してます。小学校の頃から算数が苦手でした。(よく、「東大だから数学できるんでしょ」と言われるのですが、高校1年の頃から私立文系と固く心に決め、東大には後期試験一本で臨んだ私は、当時のセンター試験ですら数学を受験しておりません)

だから、理系に憧れがあって、宇宙人な理系男子を四苦八苦で子育てする!という事態を、密かに恐れながらも楽しみにしてたりしたのですが、、、蓋を開けたら、上の娘も下の息子も、幼児期からしてバリバリの文系タイプ。なので、二人とも言葉や文字の習得には全く苦労しないし、コミュニケーションもすごく取りやすいので、まあ、母的には想定内、というか、楽っちゃ楽なんですけど(笑)旦那も超文系なので、やっぱり遺伝的なものは大きいのかなあ、と思いつつ、せめて絵本で算数の楽しさに近づけるものがないかなあ、と探して見つけたのがこれ。

1本のバナナから始まって、それに0がひとつずつ増えたら一体どうなる?100羽のペンギンが10個ずつアイスクリームを持っていたら?1000個ずつマシュマロを入れたバスケットが100あったら?恐竜の時代は6500万年前、太陽の年は50億年、太陽から一番近い星までの距離は40兆キロ。ゼロが100個ついた天文学的数字「グーゴル」まで、子どもが喜びそうな自由なイメージと、恐竜や天体などの科学的知識を交えながら辿っていけます。

子どもたちは、大体5、6歳くらいから「大きな数」に興味を持ち始めて「いちまんおく」とか「いちおくまん」とか言い始めるのもこの時期のあるあるですよね。子どもだけでなく、大人でもお金以外で100万とか1億とかの大きな数字をイメージするのって、かなり難しいことです。有名な「Google」が「グーゴル」からきているなんてことも、私は全然知りませんでした。

大人でも「なるほどー」と思いながら、子どもと一緒に読み進めていくのがとても楽しい本です。最近では、大きい数字だけでなく「Google」の方を小耳に挟んで、そちらから興味を持つ子どもも多いかもしれませんね。

【おすすめ絵本】 『ねこざかな』

ねこざかな

作・絵: わたなべ ゆういち 出版社:フレーベル

 

絵も歌も言葉もお話も、子どもの心からの「楽しい」が詰まった、ナンセンス絵本の傑作。

 

 

《概要》

ある日、食いしん坊の猫が大きな魚を釣り上げた。猫が魚を食べようとしたら、反対に大きな魚は猫をパクリと飲み込んでしまいます。お互いに「けしからん!」と喧嘩していた猫と魚は、いつの間にか魚が猫を口に入れたまま「ねこざかな」として遊び始めます。

《おすすめタイプ》

ストーリーを理解しなくても2歳くらいから楽しめます。長いストーリーや絵本が苦手な子にもおすすめ。

《おすすめポイント》

長新太さんの『ブタヤマさんたらブタヤマさん』の記事でも紹介したように、子どもは、大人からすると「何それ!」というようなナンセンスやシュールさが大好物だったりします。

猫が魚を飲み込んで合体して「ねこざかな」。もういきなり、「何じゃそりゃ」という感じですが、この絵本も、母親の思惑はお構いなく、子どもが選んで借りてきて、すっかりお気に入りになってしまった絵本の一つです。なんと、ミュンヘン国際児童図書展優秀絵本やボローニャ国際児童図書展グラフィック賞など、数々の賞を受賞した名作だった、なんて知ったのは後から。シリーズでいくつも作品があって、どれも最強にくだらないのですが(笑)、少しでも物語性があったりためになる絵本を、、、などという密かな親の野望をものともせず、とにかくうちの子どもたちは喜んで読んでいました。

 

ストーリーはあってないような感じですが、とにかく発想が面白い。ユーモラスでカラフルな絵や、歌や言葉遊びなど、子どもが素直に楽しめる要素がいっぱい詰まっています。この作品には出てきませんが、『ねこざかなのおしっこ』とか『そらとぶねこざかな』とか、子どもたちが大好きな「下ネタ」も出てきたりします(笑)

 『ブタヤマさんたらブタヤマさん』の記事でも書きましたが、大人の常識には包容しきれないこのナンセンスとシュールさ。その自由奔放さが、子どもの想像力と創造力の要なんですよねえ。子どもってほんと、親の予想の斜め上を行く回答や反応を示したりしますが、そこでイライラしてはいかんのです。だって、大人の想定内で行動する子どもなんて、本当は気持ち悪いんですもの。そうやって、母は自分に言い聞かせながら、内心「なんじゃそりゃ」と思いつつ、今日もナンセンス絵本を読むのでした。

【おすすめ絵本】 『チトくんとにぎやかないちば』

『チトくんとにぎやかないちば』

文:アティヌーケ 絵:アンジェラ・ブルックスバンク 

訳:さくまゆみこ 出版社:徳間書店

 

 

カラフルで生き生きとしたアフリカの市場に旅した気分が味わえる楽しい絵本

《概要》

小さなチトはお母さんにおんぶされて、賑やかな市場にやってきます。キョロキョロしているチトに、バナナ売りのアデさんがバナナを6本くれました。チトは一本食べて残りはお母さんが頭に載せたカゴへぽん。でも、お母さんは買い物に夢中で気がつきません。バナナの次はオレンジ、その次はお菓子、とうもろこしに、ココナッツ、、、カゴの荷物はどんどん増えていきます。お母さんがタクシーに乗って帰ろうとすると、あらびっくり!

《おすすめタイプ》

3歳くらいから。男の子でも女の子でも。食べ物やお買い物に興味がある子にもぴったり。

《おすすめポイント》

子どもにとって絵本は無限大の世界。身近なものへの興味から世界を広げていくのも楽しいけれど、絵本だからこそ、普段は目にしない世界を大胆に味あわせてあげたい、とも思います。世界の色々な国の風物、自分とは違う人種や生活があるんだ、という実感を小さい頃から少しずつ身につけて欲しい。

これは、西アフリカのナイジェリアで育ったアティヌーケとアンジェラ・ブルックスバンクによって作られた楽しい絵本です。

ナイジェリア、というのは、子どもだけでなくお母さんにもあまり馴染みがない国かもしれませんが、「お母さんと一緒にお買い物に行く」という、子どもが想像しやすいシチュエーションなので、とっかかりやすいと思います。絵も、とてもカラフルで市場の様子が生き生きと描かれているので、子どもの目を惹きやすいのも好きなところ。

お米や野菜が大きな樽やかごに入れてそのまま売られていたり、ヤシ油や唐辛子やココナッツ、カラフルなサンダルや服が山積みされた露店、バイクタクシーなどなど、、、子ども達が知っている「お買い物」とは全く違う風景、食べ物、習慣などに、子どもから質問攻めにあうのは必至です(笑)

「お買い物かごを手に持つんじゃなくて頭に乗せてるんだね」「ココナッツは何に使うのかな」「自分の車で買い物に行くんじゃないの?」「バイクにたくさん乗って危なくないのかな?」自分たちにとって当たり前の買い物風景と違うところを挙げながら、子どもたちの興味と世界をどんどん広げて逝けます。

外国のお話に触れた時には、「ところで、この国はどこら辺にあるのかな?」と「せかいちずえほん」で確認するのも、我が家の大事な日課です。国や地名が出たら、地図で確認する、というのを繰り返していると、絵本だけでなく、テレビや学校や幼稚園で出た地名や国名を、自然と子どもが「どこにあるのかな?」と興味を持つようになってくれます。学校に入ってからただ暗記だけの地理を勉強するのは本当につまらないですよね。小さい頃から、絵本や日常生活と地図を自然に繋げていくことで、その延長線上に自分たちと同じ人間や生活や歴史がある、ということを想像できるようになってほしいな、と思います。

 

【おすすめ絵本】 『きょうはなんのひ』

 

きょうはなんのひ?

作:瀬田貞二  絵:林明子  出版社:福音館書

名作揃いの明子さん絵本の中でも、特にお気に入りの一冊。ストーリー絵もバランス良く楽しめる。

《概要》

まみこは、ある朝、学校に行く前に「おかあさん、きょうはなんのひだか、しってるの?しーらないの、しらないの、しらなきゃかいだん三だんめ」と歌って行ってしまいました。お母さんが見つけた階段三段目の手紙から、順番に家中に隠された手紙を辿っていくと、、、最後には素敵なプレゼントが!実は、お父さんとお母さんも、まみこに素敵なプレゼントを用意していました。今日は、お父さんとお母さんの10回目の結婚記念日だったのです。

《おすすめタイプ》

少し長いので5、6歳から。読む練習になるので、小学校低学年が自分で読むのにもおすすめです。

《おすすめポイント》

林明子さんの絵本は本当に名作揃い。初めて赤ちゃんが出会う絵本シリーズの中には是非是非入れて欲しい『おつきさまこんばんは』や『おててがでたよ』。もう少し大きくなったら『はじめてのおつかい』に『こんとあき』、筒井頼子さんとの共作では他に『あさえとちいさいいもうと』のシリーズもおすすめ。どれも大好きで甲乙つけ難いのですが、一番のお気に入りを挙げるとしたらこれ!『きょうはなんのひ?』です。

この絵本は自分が子供の時のお気に入りで、うちの子供たちにも読み聞かせたらすぐに気に入ってくれました。自分は好きだったのに、親になって読み聞かせてみたら子供の反応イマイチ、、、なんてこともよくあるあるですが、これは珍しく親子揃ってのヒット。

何が好きってねー、、、全部です。

おかあさんが順番に手紙を探していくところもワクワクするし、お家の中を探検するのも楽しいし、綺麗な小箱の入子になっていて宝石みたいな南天の実とりゅうのひげの玉が出てくるプレゼントも素敵だし、おとうさんが連れて帰ってくるワンちゃんもとびきり可愛いし、最後の最後で手紙を全部繋げるとメッセージになってるという仕組みも面白い。

手紙を探しながら、おかあさんが応接間のピアノを弾いたり、まみこのお気に入りの絵本『マドレーヌといぬ』を開いたり、お庭の金魚の池をすくったり、というディティールの楽しさ。順番に手紙を辿っていく謎解きのようなストーリーの面白さもあるし、何枚もの手紙を繋げて読む仕掛けや、最後に「お父さんとお母さんは、ほんとうに知らなかったのでしょうか」なんてメッセージで考えさせるところは、結構高度な読解力が必要とされます。本当にバランスの良い仕上がりというか、大人になってから読んでみると、子供が長く楽しめる内容の絵本になっていて、改めて感心させられました。

「SWEET TEN DIAMOND」なんてキャッチコピーや「サプライズ」なんて言葉が使われるずっと前からあったこの絵本(いや、そのキャッチコピー自体も古いな、、、)。結婚記念日を子供がお祝いしてくれて、そして、子供への素敵なプレゼントでお返しする、そういうやりとりが温かくて素敵だなあ、と思います。子供の頃読んだ時には、いつか、このまみこみたいな企画をやってみたい!って思ったものですが、実行に移すには中々の企画力と行動力が必要で、結局実現しなかったなあ。。。

大好きなおとうさんとおかあさんのためにまみこが一生懸命作った手紙やプレゼント。その企画に嫌な顔一つせず半日つきあってあげるおかあさん。そして、自分たちの結婚記念日のためにおとうさんが企画した素敵なサプライズ。家族みんなのお互いを思いやる気持ちと心のゆとり、、、結婚10年を過ぎた自分としては色々考えさせられる作品でもあります(笑)

 

【おすすめ絵本】 『そらまめくんのベッド』

そらまめくんのベッド』 

作:なかや みわ  出版社:福音館書店

 

 

発想と着眼点が面白いなかやみわさんの絵本の中でも特に人気のシリーズ。

《概要》

そらまめくんのベッドは、雲のようにふわふわでわたのように柔らかい。お友達のえだまめくんやグリーンピースのきょうだいたちが「そのベッドでねむってみたいな」と言っても、そらまめくんは「だめだめ」と使わせてくれません。ところがある日、その大事なベッドが無くなってしまって、、、お友達は親切にベッドを貸してくれますが、そらまめくんには中々大きさが合いません。やっと見つかったベッドには、なんとうずらの赤ちゃんが隠れていました。

《おすすめタイプ》

3歳くらいから。男の子でも女の子でも楽しめます。

《おすすめポイント》

なかやみわさんの絵本は比較的新しい絵本ですが、あっという間に人気シリーズになりました。「くれよんのくろくん」「どんぐりむら」などのシリーズも面白く、うちの子供たちも大好き。どれも面白いのですが、私が個人的に一番好きだったのがこれ「そらまめくん」シリーズです。

「おまめ」が出てくるお話はたくさんあるけれど、おまめの「さや」をここまでフォーカスしたお話はかつてないのではないでしょうか(笑)初めて読んだ時、「なるほど、そう来るか!」と感心してしまいました。そらまめって形も面白いですが、さやの中のわたがまたなんとも面白いですよね。

子供はあまりそら豆なんて食べないので、まずはそら豆を実際に見るところから始めます。で、他のお豆も色々比べてみて、なるほど、豆の形や大きさもさやの様子もそれぞれに違うね、と話が広がる。そんなきっかけからお豆に興味が出て苦手なお豆も食べられるように!!、、、なんて、うまくはいかないですが(笑)、少しでもお豆に興味が出て身近なものになってくれるだけでも良いかな、と思います。ちなみに、そらまめ自体に興味を持ったら、昔懐かし、漫画日本昔話に「空豆の黒い筋」という超絶くだらない話がありますので、是非観て観てください(笑)

なかやみわさんの絵はキャラクターがとてもコミカルで親しみやすいのと、細部まで楽しめる仕掛けがしてあります。この本でも、おまめくんたちの表情がとても豊かなのと、おまめくんたちのお家や原っぱの周りの虫や植物など細かいところまで描きこんであるのが楽しめます。絵が面白いのは、「どんぐりむら」シリーズが一番かもしれません。

見た目の面白さやとっかかりやすさだけでなく、ストーリーが子供の心をよく捉えているのも、なかやみわさんの絵本の良いところ。この本であれば、最初はそらまめくんが自分の大事なベッドをお友達に貸してあげないのに、困ったそらまめくんにお友達がベッドを貸してくれる、そういう過程を経て、そらまめくんの心境がだんだん変化していくドラマがよく描かれています。大事なものを「貸して」と言われて「やだ!」と言ってしまう心理も、でも、それではお友達同士で共有する楽しみが広がらない、という葛藤も、小さい子なら誰でも体験したことがあるはずです。