受験にも知育にも興味ない 東大卒ママの育児日記

受験にも知育にも興味ないズボラな東大卒の二児の母が、おすすめの育児書や絵本を紹介したり、教育についての思いをつらつらと語ります

【教育本・教養本】 『13歳からのアート思考』

 

 こちらも今話題の本です。

結論から言うと、内容としては面白かったのですが、この本の読者ターゲットがいまいちイメージできなかったな、という気はします。

著者は、自身もアーティストの傍ら、美術教師をしている方で、普段自分が授業でやっていることを元に、この本を書いたそうです。確かに、実際に図工や美術を教えている先生には是非この本を読んでもらいたいし、実際にこういう授業をやっているところがあれば、子どもにも授業を受けさせたい。ただ、親がこの本を読んで具体的にどうするか、となると中々難しいよなあ、とも思います。

タイトルに「13歳からの」とあるので、教育用の本なのかな?と思ってしまいそうですが、これはどちらかと言うと大人向けの本ですね。思春期の(ともすれば親に対して反抗的な頃の)子どもに、親が誘導してこの本を読ませたり、親がこの本をを使って指南する、と言うのは現実的に難しいでしょう。

概要としては、

アートの本質は「自分の好奇心」や「内発的な関心」からスタートして、価値創出をすることにある

アート思考とは、「自分のものの見方」で世界を見つめ、好奇心に従って探究を進めることで「自分なりの答え」を生み出すことであり、今の社会ではそれが求められている

ということを、アートの授業を使って体感し理解していく、という内容になっています。

 

美術の本来の目的は「自分なりの答え」を“つくる“能力を育むことであり、「VUCAワールド」と形容されるような変化が激しい現代社会では、世界が変化するたびに、その都度「新たな正解」を見つけていくのは、もはや不可能だし、無意味でもある、人生の様々な局面で「自分なりの答え」をつくる力が問われてくる、だからこそ、子どもにとっても大人にとっても、いままさに最優先で学ぶべき教科は、ほかでもなく「美術」である。

と言うのが作者の言いたいことです。

 

Class1から5まで、有名なモダンアート作品を例に挙げ、簡単なエクササイズやアウトプットをしながら、段階を踏んで「アートとはどんなものか」ということを考えていきます。写実性に優れた作品だけが素晴らしいというわけではない、人間のものの見方は複雑で遠近法だけがリアルさを表現する手法ではない、アート鑑賞とは表現者の意を一方的に汲み取るだけでなく鑑賞者の「感じ方」自体を反映した双方向のものである、アートは視覚的なものに限らなくてもよい、アートは何らかのイメージを表象していなければならないわけではない、アートとは常に新しい何かであり「こうでなければならない」という定義は存在しない、、、私たちが日頃囚われているアートに対する常識がひとつひとつ覆されていきます。

結論だけ取り出してしまうと、なんだか難しい哲学的な美術論みたいに聞こえますが、有名なピカソの『アビニヨンの娘たち』にできる限りダメ出しをしてみください、とか、5分間鉛筆を使ってラクガキをしてみて下さい、とか、面白く簡単なエクササイズを挟みながら実際のアート作品を使って体得する、というスタイルなのでとても分かりやすく、腑に落ちます。実際に授業を受けた中高生たちの素朴で率直な意見や感想がたくさん紹介されているのも、ライブ感もあり共感しやすいです。

で、大人が「なるほど」と読むにはとても良かったのですが、親がこれを教育に役立てようとするには、、、中々難しいかもしれません。と言うか、この本が言っていることを突き詰めれば、親はまず「子どもをどう教育するか」の前に「自分がアーティストであるかどうか」を自らに問う必要があるでしょう。これに自信持って答えられる親はまだまだ少ないのではないかと思います(もちろん自分も含めて)。そして、そういう自信を持てない親が、難しい年齢に差しかかった子どもにいくらこの本を薦めても、子どもからしたら全く説得力がないでしょう。

教育的な観点からは、巻末に、東京大学法学部を卒業後、P&Gやソニーなどを経て、共創型イノベーションファームBIOTOPEを起業した佐宗邦威さんという方が解説を書いていて、こちらの内容が結構参考になりそうでしたので引用しておきます。

むしろ、これからの時代の子どもたちに必要なのは、すでに存在する職業の中から「正解」を選ぶ力ではなく、むしろ、自分のビジョンや夢をもとに「職業そのものをつくっていく力」のほうだろう。

 

小学校低学年くらいまでは、自由に感じ、自由に表現ができていた子どもたちも、高学年に差し掛かると、自我が高まり社会性を帯びることで、自分と向き合う機会が減っていく。さらに、塾に行ったり、中学受験をしたりすれば、子どもたちは一気に「創造モード」を捨て去ることになりかねない。