受験にも知育にも興味ない 東大卒ママの育児日記

受験にも知育にも興味ないズボラな東大卒の二児の母が、おすすめの育児書や絵本を紹介したり、教育についての思いをつらつらと語ります

【おすすめ絵本】 『チトくんとにぎやかないちば』

『チトくんとにぎやかないちば』

文:アティヌーケ 絵:アンジェラ・ブルックスバンク 

訳:さくまゆみこ 出版社:徳間書店

 

 

カラフルで生き生きとしたアフリカの市場に旅した気分が味わえる楽しい絵本

《概要》

小さなチトはお母さんにおんぶされて、賑やかな市場にやってきます。キョロキョロしているチトに、バナナ売りのアデさんがバナナを6本くれました。チトは一本食べて残りはお母さんが頭に載せたカゴへぽん。でも、お母さんは買い物に夢中で気がつきません。バナナの次はオレンジ、その次はお菓子、とうもろこしに、ココナッツ、、、カゴの荷物はどんどん増えていきます。お母さんがタクシーに乗って帰ろうとすると、あらびっくり!

《おすすめタイプ》

3歳くらいから。男の子でも女の子でも。食べ物やお買い物に興味がある子にもぴったり。

《おすすめポイント》

子どもにとって絵本は無限大の世界。身近なものへの興味から世界を広げていくのも楽しいけれど、絵本だからこそ、普段は目にしない世界を大胆に味あわせてあげたい、とも思います。世界の色々な国の風物、自分とは違う人種や生活があるんだ、という実感を小さい頃から少しずつ身につけて欲しい。

これは、西アフリカのナイジェリアで育ったアティヌーケとアンジェラ・ブルックスバンクによって作られた楽しい絵本です。

ナイジェリア、というのは、子どもだけでなくお母さんにもあまり馴染みがない国かもしれませんが、「お母さんと一緒にお買い物に行く」という、子どもが想像しやすいシチュエーションなので、とっかかりやすいと思います。絵も、とてもカラフルで市場の様子が生き生きと描かれているので、子どもの目を惹きやすいのも好きなところ。

お米や野菜が大きな樽やかごに入れてそのまま売られていたり、ヤシ油や唐辛子やココナッツ、カラフルなサンダルや服が山積みされた露店、バイクタクシーなどなど、、、子ども達が知っている「お買い物」とは全く違う風景、食べ物、習慣などに、子どもから質問攻めにあうのは必至です(笑)

「お買い物かごを手に持つんじゃなくて頭に乗せてるんだね」「ココナッツは何に使うのかな」「自分の車で買い物に行くんじゃないの?」「バイクにたくさん乗って危なくないのかな?」自分たちにとって当たり前の買い物風景と違うところを挙げながら、子どもたちの興味と世界をどんどん広げて逝けます。

外国のお話に触れた時には、「ところで、この国はどこら辺にあるのかな?」と「せかいちずえほん」で確認するのも、我が家の大事な日課です。国や地名が出たら、地図で確認する、というのを繰り返していると、絵本だけでなく、テレビや学校や幼稚園で出た地名や国名を、自然と子どもが「どこにあるのかな?」と興味を持つようになってくれます。学校に入ってからただ暗記だけの地理を勉強するのは本当につまらないですよね。小さい頃から、絵本や日常生活と地図を自然に繋げていくことで、その延長線上に自分たちと同じ人間や生活や歴史がある、ということを想像できるようになってほしいな、と思います。

 

【おすすめ絵本】 『きょうはなんのひ』

 

きょうはなんのひ?

作:瀬田貞二  絵:林明子  出版社:福音館書

名作揃いの明子さん絵本の中でも、特にお気に入りの一冊。ストーリー絵もバランス良く楽しめる。

《概要》

まみこは、ある朝、学校に行く前に「おかあさん、きょうはなんのひだか、しってるの?しーらないの、しらないの、しらなきゃかいだん三だんめ」と歌って行ってしまいました。お母さんが見つけた階段三段目の手紙から、順番に家中に隠された手紙を辿っていくと、、、最後には素敵なプレゼントが!実は、お父さんとお母さんも、まみこに素敵なプレゼントを用意していました。今日は、お父さんとお母さんの10回目の結婚記念日だったのです。

《おすすめタイプ》

少し長いので5、6歳から。読む練習になるので、小学校低学年が自分で読むのにもおすすめです。

《おすすめポイント》

林明子さんの絵本は本当に名作揃い。初めて赤ちゃんが出会う絵本シリーズの中には是非是非入れて欲しい『おつきさまこんばんは』や『おててがでたよ』。もう少し大きくなったら『はじめてのおつかい』に『こんとあき』、筒井頼子さんとの共作では他に『あさえとちいさいいもうと』のシリーズもおすすめ。どれも大好きで甲乙つけ難いのですが、一番のお気に入りを挙げるとしたらこれ!『きょうはなんのひ?』です。

この絵本は自分が子供の時のお気に入りで、うちの子供たちにも読み聞かせたらすぐに気に入ってくれました。自分は好きだったのに、親になって読み聞かせてみたら子供の反応イマイチ、、、なんてこともよくあるあるですが、これは珍しく親子揃ってのヒット。

何が好きってねー、、、全部です。

おかあさんが順番に手紙を探していくところもワクワクするし、お家の中を探検するのも楽しいし、綺麗な小箱の入子になっていて宝石みたいな南天の実とりゅうのひげの玉が出てくるプレゼントも素敵だし、おとうさんが連れて帰ってくるワンちゃんもとびきり可愛いし、最後の最後で手紙を全部繋げるとメッセージになってるという仕組みも面白い。

手紙を探しながら、おかあさんが応接間のピアノを弾いたり、まみこのお気に入りの絵本『マドレーヌといぬ』を開いたり、お庭の金魚の池をすくったり、というディティールの楽しさ。順番に手紙を辿っていく謎解きのようなストーリーの面白さもあるし、何枚もの手紙を繋げて読む仕掛けや、最後に「お父さんとお母さんは、ほんとうに知らなかったのでしょうか」なんてメッセージで考えさせるところは、結構高度な読解力が必要とされます。本当にバランスの良い仕上がりというか、大人になってから読んでみると、子供が長く楽しめる内容の絵本になっていて、改めて感心させられました。

「SWEET TEN DIAMOND」なんてキャッチコピーや「サプライズ」なんて言葉が使われるずっと前からあったこの絵本(いや、そのキャッチコピー自体も古いな、、、)。結婚記念日を子供がお祝いしてくれて、そして、子供への素敵なプレゼントでお返しする、そういうやりとりが温かくて素敵だなあ、と思います。子供の頃読んだ時には、いつか、このまみこみたいな企画をやってみたい!って思ったものですが、実行に移すには中々の企画力と行動力が必要で、結局実現しなかったなあ。。。

大好きなおとうさんとおかあさんのためにまみこが一生懸命作った手紙やプレゼント。その企画に嫌な顔一つせず半日つきあってあげるおかあさん。そして、自分たちの結婚記念日のためにおとうさんが企画した素敵なサプライズ。家族みんなのお互いを思いやる気持ちと心のゆとり、、、結婚10年を過ぎた自分としては色々考えさせられる作品でもあります(笑)

 

【おすすめ絵本】 『そらまめくんのベッド』

そらまめくんのベッド』 

作:なかや みわ  出版社:福音館書店

 

 

発想と着眼点が面白いなかやみわさんの絵本の中でも特に人気のシリーズ。

《概要》

そらまめくんのベッドは、雲のようにふわふわでわたのように柔らかい。お友達のえだまめくんやグリーンピースのきょうだいたちが「そのベッドでねむってみたいな」と言っても、そらまめくんは「だめだめ」と使わせてくれません。ところがある日、その大事なベッドが無くなってしまって、、、お友達は親切にベッドを貸してくれますが、そらまめくんには中々大きさが合いません。やっと見つかったベッドには、なんとうずらの赤ちゃんが隠れていました。

《おすすめタイプ》

3歳くらいから。男の子でも女の子でも楽しめます。

《おすすめポイント》

なかやみわさんの絵本は比較的新しい絵本ですが、あっという間に人気シリーズになりました。「くれよんのくろくん」「どんぐりむら」などのシリーズも面白く、うちの子供たちも大好き。どれも面白いのですが、私が個人的に一番好きだったのがこれ「そらまめくん」シリーズです。

「おまめ」が出てくるお話はたくさんあるけれど、おまめの「さや」をここまでフォーカスしたお話はかつてないのではないでしょうか(笑)初めて読んだ時、「なるほど、そう来るか!」と感心してしまいました。そらまめって形も面白いですが、さやの中のわたがまたなんとも面白いですよね。

子供はあまりそら豆なんて食べないので、まずはそら豆を実際に見るところから始めます。で、他のお豆も色々比べてみて、なるほど、豆の形や大きさもさやの様子もそれぞれに違うね、と話が広がる。そんなきっかけからお豆に興味が出て苦手なお豆も食べられるように!!、、、なんて、うまくはいかないですが(笑)、少しでもお豆に興味が出て身近なものになってくれるだけでも良いかな、と思います。ちなみに、そらまめ自体に興味を持ったら、昔懐かし、漫画日本昔話に「空豆の黒い筋」という超絶くだらない話がありますので、是非観て観てください(笑)

なかやみわさんの絵はキャラクターがとてもコミカルで親しみやすいのと、細部まで楽しめる仕掛けがしてあります。この本でも、おまめくんたちの表情がとても豊かなのと、おまめくんたちのお家や原っぱの周りの虫や植物など細かいところまで描きこんであるのが楽しめます。絵が面白いのは、「どんぐりむら」シリーズが一番かもしれません。

見た目の面白さやとっかかりやすさだけでなく、ストーリーが子供の心をよく捉えているのも、なかやみわさんの絵本の良いところ。この本であれば、最初はそらまめくんが自分の大事なベッドをお友達に貸してあげないのに、困ったそらまめくんにお友達がベッドを貸してくれる、そういう過程を経て、そらまめくんの心境がだんだん変化していくドラマがよく描かれています。大事なものを「貸して」と言われて「やだ!」と言ってしまう心理も、でも、それではお友達同士で共有する楽しみが広がらない、という葛藤も、小さい子なら誰でも体験したことがあるはずです。

【おすすめ絵本】 『14ひきのこもりうた』

14ひきのこもりうた』

作:いわむら かずお 出版社:童心社

 

 

どこか懐かしい家族の温もりを感じられる「14ひき」シリーズ

《概要》

ねずみの家族は、10匹の子供にお父さんとお母さんとおじいちゃんとおばあちゃんの14ひきの大家族。今日も、夕焼けに染まる中、お父さんたちが帰ってきて、お風呂に晩御飯、最後は子守唄を歌って、お話をしたり、ご本を読んだり、14ひきのいつもの1日が終わります。

《おすすめタイプ》

性別を問わず3歳くらいから。

《おすすめポイント》

ねずみの大家族を描いた「14ひきの」は大人気のシリーズ。他にも、「14ひきのあさごはん」「14ひきのおひっこし」「14ひきのやまいも」などたくさん作品があります。

中でも、この『14ひきのこもりうた』は、本当にこのねずみ大家族のごく普通の一日の終わりを描いているところが、私のお気に入りです。大きなイベントも事件も何もない。でも、夕闇が迫ってくるお風呂の中でおじいちゃんの背中を流したり、ご飯の後でみんなで今日1日のお話をしたり、寝る前におトイレに行って歯磨きをしたり、そう言う一つ一つの行動に、繊細な感覚や季節感や時間の流れ、みたいなものが生きています。

今はおじいちゃんおばあちゃんも一緒に、こんな大家族で暮らしている方が珍しいでしょう。昔の日本では当たり前だったこんな光景が、今の子供には返って新鮮に映ると思います。『ちいさなねこ』 『ものうりうた』の記事でも書きましたが、古い昭和時代を感じさせる絵本って結構大事で、「パパやママやおじいちゃんおばあちゃんが小さかった頃の時代」に興味を持つことが、最初の「歴史の発見」に繋がるのではないか、と思っています。

柔らかな色調の絵もとても温かくて心が和むし、細部まで楽しめるところも好き。動物好きな子は、可愛いねずみに興味を惹かれることでしょう。それから、この作品の良いとっかかりは、なんといっても「こもりうた」です。

最後におばあちゃんが歌ってくれる子守唄。もちろん、他の絵本に出てくる歌のように、お母さんが出鱈目に節をつけても構いませんが、この本は、ご丁寧に見開きにその子守唄の楽譜を載せてくれています。ごく簡単な曲なので、ピアノなどを習っているお子さんとは一緒に曲を弾いてみても楽しいかもしれない。私のように音楽が苦手で、楽譜を見ただけではちょっと曲の感じが掴めない、、、と言う方には、今では便利なYouTubeの動画もあります(笑)音楽や歌は、絵本に興味を惹く大事なとっかかりになりますから、ぜひ、お子さんと一緒に聴いてみてはいかがでしょうか。

 

【おすすめ絵本】 『たいようオルガン』

 

 

溢れる色彩と音楽で、子供の感性や表現力を刺激してくれそうな絵本。

《概要》

太陽がオルガン弾いて朝が来た。ゾウバスくんが朝日の中を出発して、旅をします。畑の丘を越え、街を越え、橋を渡ったり、海を渡ったりしながら、みんなゾウバスに乗ったり降りたり。途中雨が降ってきたり、夕焼けを見たりしながら、ゾウバスの旅は夜まで続きます。

《おすすめタイプ》

男の子でも女の子でも。3歳くらいから、とありますが、1、2歳の子が絵を眺めるだけでも楽しめると思います。

《おすすめポイント》

これも比較的新しい絵本です。作者の荒井良二さんは、山形県出身で日大芸術学部を卒業後、絵本を描き始め、『なぞなぞのたび』でボローニャ国際児童図書展特別賞を受賞、スウェーデンの児童文学賞の他、日本絵本賞、小学館児童出版文化賞など数々の賞を受賞。本書でも日本国際図書評議会(JBBY)賞を受賞しています。

とにかく隅々まで絵を楽しみたい絵本です。ゾウバスが、野原を、砂漠を、街の中を、橋の上を、海を、走る走る。1日の日差しの移ろい、天気の移り変わり、雨の香りや空の色まで五感で感じるように楽しめます。作者の荒井良二さん音楽活動を行っていることも有名ですが、この「たいようオルガン」を元にした合唱曲まであるようです。(Youtubeで視聴できます。こちら)ちょっと、クラシックだと重厚過ぎるというか、もっと軽快で明るいイメージな方が合うような気もしますが、この絵本が音楽を感じさせる、というのはよく分かる気がしますね。ゾウバスとかたいようオルガンといった自由な発想、ふんだんに使われた色彩、手書きの文字、子供の心そのままを表現したような世界で、文字や文章が分からない子供でもスッと入っていけます。

幼児が描いたような朴訥な絵なんだけれど、細部までこだわりがあって、夕焼け、海、雨の灰色、夜、など色彩のトーンが本当に豊かなので、色々な楽しみ方がで切るのも良いところ。ユニークな動物を面白がる子もいれば、砂漠や南国を思わせる風物に興味を覚える子もいるのではないでしょうか。ちなみに、うちの子供は、たこやいかや昆布まで出てくる海辺の道のシーンと、夕焼けのバザールようなシーンの2つがお気に入りです。私が好きなのは、中盤で雨が降ってくるシーン。ぜひ、何度も読んで、あ、こんなのもいる、あんなのもある、と新しい発見をしながら、お気に入りのシーンを探してみてください。

【おすすめ絵本】 『どうぞのいす』 

どうぞのいす』

作:香山 美子 絵:柿本 幸造 出版社:ひさかたチャイルド

 

 

 

小さい子でもストーリーを楽しめる、読み聞かせ初期に最適の本。可愛くて温かい色調の絵も素敵です。

《概要》

うさぎさんが小さないすを作りました。小さなしっぽをつけたいすのそばには立て札が一つ。「どうぞのいす」。そこへ、ろばさん、くまさん、きつねさん、りすさんが順番にやってきて、、、あれれ、みんなが「どうぞ」の気持ちを忘れずにいたおかげで、最後は、ろばさんのどんぐりが、いつの間にかくりに変わっていましたよ。

《おすすめタイプ》

1、2歳から。動物好きな子にもおすすめ

《おすすめポイント》

日本で100万部を超えたベストセラー、『ぐりとぐら』や『からすのパン屋さん』に並ぶ定番中の定番絵本です。

日本の出版社はひさかたチャイルドですが、うちで所蔵しているのはタイの出版社のもの。日本語とタイ語が併記されています。タイのバンコクでは、紀伊國屋で日本製絵本をたくさん購入できますが、タイ製で日本語も併記されている絵本というのは中々貴重です。この絵本も、紀伊國屋ではなく、なんと日系のスーパーで買いました。『どうぞのいす』が、いかに普及しているかが分かります。

『しゅっぱつ、しんこう』の記事でも書きましたが、柿本幸造さんの描く動物はとっても可愛くて、色調にも質感にも柔らかさと温かみがあって大好き。うさぎさんも可愛いですが、お目目くりくりのロバさんや賑やかなりすさん達も愛嬌たっぷりです。うさぎさんのいすには小さなしっぽがついていたり、初めから終わりまで密かにおこぼれを頂戴している食いしん坊の小鳥さんがいたり、細部まで楽しめるのも良いところです。

そして、前回の 『しんせつなともだち』でも書きましたが、この絵本も「くりかえし」のパターンが生きています。ろばさんはどんぐりを、くまさんははちみつを、きつねさんはパンを、りすさんはくりを持ってやってきて、「どうぞのいす」に置いてあるものを食べてから、自分のを置いていく。そのくりかえし。そして、最後の最後で、初めにろばさんが持ってきたどんぐりが、いつの間にかくりに変わってる?どんぐりってくりの赤ちゃんだったっけ?と、初めに戻る仕掛けになってきます。これも、2、3歳の子だと、「初めにろばさんがどんぐりを持ってやってきた」ということ自体を忘れてしまっていたりするので、ストーリーを追って体験する、良いトレーニングになると思います。

もちろん、みんなが「えんりょなくいただきましょう」と言った後で、ちゃんと次の人のために「どうぞの気持ち」を忘れずにいてあげる、その礼儀正しさと温かい気持ちも素敵です。そういう、お話自体が「素敵な気持ちリレー」で進行していくところも『しんせつなともだち』と似ていますね。

あと、どんぐりっていうのも個人的に好きです。どんぐりって、小さい子供は異常に好きじゃありませんか?私なんて、大人になっても好きなので、今でも見つけると意味なく拾ってしまいます。どんぐり。もう、これだけで子供のとっかかり十分なのではないでしょうか。『ぐりとぐら』の最初も、どんぐりとくり拾いから始まりますよね。「どんぐり」「パン」「ホットケーキ」「かぼちゃ」あたりは、日本の絵本の最高パワーワードですね。いつか、このテーマでの絵本紹介記事を書きたいなあ、と密かに思っています(笑)

 

【おすすめ絵本】『しんせつなともだち』

しんせつなともだち』

作:ファン・イーチュン 絵:村山 知義

訳:君島 久子 出版社:福音館書店

 

 

冬の寒さと厳しさを感じながらも、心がほっこりと温まる絵本。「繰り返し」を通じて、小さな子供にストーリーを体感させるのにぴったりです。

《概要》

外は一面の雪でとても寒い。こうさぎは食べ物を探しに出かけて、かぶを2つも見つけました。1つは食べて、1つはお友達のろばさんに持っていこう。でも、ろばさんは食べ物を探しに出かけているので留守でした。こうさぎがそっと置いていったかぶを見つけたろばさんは、やっぱりお友達にあげよう、と思いついて、、、みんなが食べ物を分け合う優しさを持っていて、最後はなんと、こうさぎにかぶが戻ってきたのでした。

《おすすめタイプ》

読み聞かせるなら2、3歳から。動物好きな子にも。

《おすすめポイント》

これも昔からある定番で、日本図書館協会の認定も受けている絵本です。中国の作家、ファン・イーチュンさんの童話を元に、日本人の村山知義さんが絵を描いています。動物がたくさん出てきますが、『ちいさなねこ』みたいに、結構リアルなところが、動物好きにはウケると思います。現代の絵本みたいに、動物たちがキャラクター化されて表情豊かだったり、お家の中がカラフルな物に溢れていたり、というのとは全然違う。動物達は無表情だし、彼らのお家の中ははっきり言って、かなり粗末で殺風景です。でも、それがまた、現代には無い、何もない冬の厳しさを感じさせます。そういう、ある意味殺風景な感じの絵から、動物達がそれぞれみんな、お友達のことを思いやって、一つのかぶを運んでいく、というエピソードの温かさが際立ってくるんです。

ろばさんがさつまいもを、こやぎがはくさいを、こじかが青菜を見つけて、それぞれ自分の家に帰ってくると、かぶが置いてある。こういう同じパターンの繰り返しって、絵本にはよく出てきますよね。読んでる大人からすると、若干まどろっこしかったりするんですが(私です笑)。この絵本を読んでいて、小さい子供に物語を理解させるには、こういう<繰り返し>ってすごく大事なんだなあ、と気付かされました。

大人からすると単純過ぎるくらいのこの絵本のストーリーなんですが、小さい子供にとっては、実は結構難しい。試しに、2、3歳の子供に読んであげてみてください。一度目だと、最後の最後でこうさぎのところに戻ってきたかぶは、最初にこうさぎが取ってきたかぶなんだよ!ってことが、すぐに理解できないのではないでしょうか。小さい子供は、瞬間瞬間、目の前の出来事に反応して生きてますから、たった数ページでも、絵本の初めと終わりが繋がる、というストーリー性を理解するのが意外と難しい。だからこそ、こういう<繰り返し>に意味があるんだと思います。

今の子供向けのアニメ映画なんかを見ると、ものすごく展開が早くて、びっくりしてしまいます。小さな子供を飽きさせないように、という工夫なのは分かりますが、ディズニー映画なんかも、こんなスピード感で本当に子供は理解できるのかしら?と思ってしまいます。

ネットのおかげで、情報化・スピード化が進み、エンターテイメントも、どんどん細切れの、集中力を伴わない類のものに変わっていくなあ、と思います。そういう「今」に生きるセンスも大事だと思うのですが、子供はあっという間に新しいものには慣れて身につけてしまいます。だからこそ、小さい頃は、こんな昔ながらのゆったりした<繰り返し>を楽しむ経験もさせてあげたいなあ、と思うのです。<繰り返し>を通じて物語を頭で理解するのではなく、体感していくようなゆとりある時間。お母さんやお父さんと一緒に絵本を楽しむ大切な時間の意味じゃないかな、と思います。