受験にも知育にも興味ない 東大卒ママの育児日記

受験にも知育にも興味ないズボラな東大卒の二児の母が、おすすめの育児書や絵本を紹介したり、教育についての思いをつらつらと語ります

【おすすめ絵本】 『ちょっとだけ』

ちょっとだけ

作:瀧村有子 絵:鈴木永子 出版社:福音館書店

 

 

お兄ちゃんお姉ちゃんになるのは、小さい子供にとって最大の心理的ドラマ。その気持ちに寄り添った、子どももお母さんも優しい気持ちになれる絵本。

《概要》

なっちゃんのおうちに、あかちゃんがやってきました。ママのスカートを「ちょっとだけ」つまんで、牛乳をコップにひとりで入れるのも「ちょっとだけ」成功して、ママが押してくれなくても自分でブランコを「ちょっとだけ」揺らして、、なっちゃんはちょっとずつ頑張って「おねえちゃん」になっていきます。でも、眠たくなっちゃった時には、どうしてもママに甘えたくなっちゃう。なっちゃんはママに「ちょっとだけ」抱っこして、と頼みます、、

《おすすめタイプ》

読んであげるなら3歳くらいから。ただ、下のおすすめポイントでも説明するように、下の子ができたばかりの頃よりも、6歳以降など、上の子が少し大きくなってから読むのがおすすめです。

《おすすめポイント》

 『ピーターのいす』の記事で書いた通り、小さな子供にとって、下の弟や妹が生まれる、というのは短い人生で最大の出来事です。我が家では、上の娘と下の息子は2歳半差。ちょうど弟が生まれたばかりの頃、里帰りしていた実家の近くの美容院に娘を連れて行きました。イヤイヤ絶頂期できかんきの顔をして不機嫌にしていた娘に、5人の子供を産んだママさんが何気なく「おやおや、人生最初の試練ってわけね」と言い聞かせていたのが印象的でした。弟や妹ができて嬉しい気持ち、今まで独り占めしていたパパやママを取られてしまう気持ち、おねえちゃんやお兄ちゃんになったんだという誇らしい気持ち、いろんな感情が交錯して複雑な時ですね。

この絵本では、主人公のなっちゃんが、赤ちゃんのお世話が忙しくてかまってもらえない間に、色んなことを「ちょっとだけ」自分でやってみる、というストーリーです。我慢の連続でかわいそうなくらいなのですが、最後の最後で、「ちょっただけだっこして」と甘えてしまうなっちゃんですが、「ちょっとだけじゃなくていっぱいだっこしたいんだけどいいですか?」と言うママの言葉に救われます。

ブログの記事を書くにあたり、この絵本の情報をグーグルで検索していると「ちょっとだけ 絵本 嫌い」とかいうキーワードが上位に出てきて、おや、と思いました。検索記事を覗いて見ると、「母親が子供に我慢をさせ過ぎていて嫌だ」とか「上の子にこの絵本を読んであげると嫌がる」などといったコメントが出てきます。確かに、この絵本のなっちゃんは、初めからずいぶんいい子にしていますし、現代の感覚からすると、小さな子供に自分で牛乳を注がせたり、公園に一人で行かせたり、赤ちゃんがいるからってほったらかしすぎでは?と思えるところもあるかもしれません。ただでさえ複雑で微妙な時期にこの絵本を読み聞かせられたら、「なっちゃんみたいに我慢しなさい」という親からの押し付けのように感じられてしまう子もいるかもしれません。

実は、我が家も、この絵本はだいぶ前に買ってあったのですが、上の子の反応もイマイチだったので、しばらく放置してありました。私も、良いお話だとは思うけれど、子どもが読みたがらない絵本を読んでも仕方ないと思ってそのままにしていました。ところが、それからもう何年も経ったある日、寝る前の読み聞かせで小学校2年生になった娘が選んだ本がこれだったのです。選んだ時には、娘も「あ、こんなのあったけど読んでないな」と軽い気持ちだったのだと思いますが、読んで聞かせていると、ちょっと様子がおかしい。なんだか、目のあたりをゴシゴシ擦っています。えー、もしかして泣いてる!?と内心びっくりしましたが、そうっとしておきました。

読み終わってから「弟とかさー妹とかさーいると大変なんだよ!」と娘がポツリ。「そうだよね、お兄ちゃんお姉ちゃんは大変なんだよね」と頷きました。上の娘は母性愛というのか、義侠心というのか、小さい頃から弟を可愛がったり庇ってあげたりする気持ちが強くて、兄弟喧嘩で苦労したこともあまり無いし、下の息子に至っては、マザコンよりもシスコンを心配するほどお姉ちゃん好きなので、「なるほど、これが一姫二太郎の良さか」などと、母は都合よく解釈していたのですが、やっぱりそれなりに上の子は我慢していたんですね(←当たり前)。

ちょうどこの絵本のなっちゃんと同じくらいの時には、まだ、自分の気持ちや立場が理解しきれていなかったのかもしれません。こうやって、もうずっと大きくなってから初めて、あの頃の複雑な気持ちが整理できたり、受け止めたりできる、ということもあるんだな、と思いました。

物語の力というのはとても大きくて、登場人物に代わって擬似体験することで、自分の気持ちが浄化される、という作用は大人にもあります。もし、お兄ちゃんお姉ちゃんになったばかりで気持ちが追いついていない時には、もう少し時間が経ってからこの本を読み聞かせてあげる、というのも良いと思います。

色々思い出したお姉ちゃんをよそに、マイペースであくびなんかして聞いている弟くんには、「お姉ちゃんはこんなに大変だったんだよ」と言い聞かせましたけど、少しは響いているのかしら、、、

 

【育児本】『世界トップ機関の研究と成功率97%の実績からついに見つかった! 頭のいい子にする最高の育て方』 ③

 

 

前回の記事の続きです。

子どもの学習方法についても、興味深いことが書かれていました。著者は、小さな子どもの学習を進める方法として、子どもにとっては少し簡単なレベルの知育ドリルを自分で選んで行わせる、という方法を推奨しています。面白いのは、知育ドリルを取り組ませることで「分かっているはずなのに解けない」という子どもの状態を分析していること。

生活の中のコミュニケーションで無意識に使うことと、それを意識のレベルで使うこととは、理解の度合いがずいぶん違うのです。

 

これを説明する例として、ストリートチルドレンが、自分の仕事でするお釣りの計算はすごく早く正確にできるのに、算数の問題を出すとさっぱりできない、という例を挙げています。

これを知識の領域の固有性といいます。おつりの計算と算数の問題で、やることはほとんど同じなのに、状況が違うと分からなくなってしまうというものです。

これは、子どもに勉強を教えていると、すごく納得できます。こちらからすれば、子どもが分かっているはずの、簡単な言葉の使い方や足し算の問題など、ちょっと違う問題パターンになったりすると全然解けない、ということがしばしば起きます。教えている大人からすると、「え、こんなことが分かっていないの!?」とショックを受けてしまうくらいなのですが、小さな子どもには至って普通のことなのだ、ということがよく分かります。大人が考えているよりも、子どもの基礎的な《知識の領域の固有性》は高いということなんですね。これを克服するためには、大人が先に問題を解いてみせる、そして、その知識を生活や違った文脈に置いて確認させる、といったことが必要になります。大人が思っているよりもずっと似たような同じ問題を繰り返し解いてみないと、理解が定着しない、ということでもあります。

この本では、幼児のひらがな、数字、計算、読解の力を高めるための具体的なステップ別の方法が示されています。我が家はもう6歳と8歳なので、この時期は過ぎてしまいましたが、音韻意識を高めるためにしりとりと童謡を取り入れる、乳幼児が生活や遊びの中で五感を使って理解する「インフォーマル算数」に取り組む、など、赤ちゃんの時から参考になることが多いです。

最後に、幼児の「習い事」についての内容に触れておきたいと思います。「習い事」については、また別の記事で書きたいな、と思っているのですが、この本でいくつか印象に残ったことを記載しておきます。著者は、AIなどで未来に必要とされる仕事や能力が不確かな今、子どもが習い事を通じて身につけておくべきなのは、必要になった時に必要な能力を自分で身につける「自己調整学習力」である、と述べています。

伊藤崇達博士によると、自己調整学習というのは「学習者が『動機づけ』『学習方略』『メタ認知』の3要素に解いて、自分自身の学習過程に能動的に関与していること」です。『動機づけ』とはモチベーションです。『学習方略』というのは「どうやったらうまくできるかな」と考えたり、「なんだか集中できないけど、どうやって気分転換しようかな」と自分で考えたりする力です。そして『メタ認知』というのは、「今、自分はどのくらいできるのかな」ということを理解する力です。自己調整学習力がある人というのは、この3つのことがしっかりとできる人のことです。

ただし、『学習方略』や『メタ認知』は幼児期には十分に育たないといわれています。およそ小学校3年生くらいから成長する力です。特にメタ認知は幼児期にもその萌芽は見られますが、基本的に幼児期は発達途上にあります。

むしろ幼児は、自分の実力をきちんと理解できないがゆえに、どんなことにもチャレンジできますし、結果がうまくいかなかったとしても、それを失敗と思わないで済みます。子どもは「無理」とか「失敗」という概念を大人が教えない限りは、自分のことを天才だと信じているわけですね。

 

 引用が少し長くなりましたが、幼児期はまだまだ自分を客観的に見て進歩の必要性を判断したり、そのための工夫をしたり、という力は十分でないわけです。だから、ある意味で、習い事をやってみたい、と自分で言ったのに、思ったのと違ってすぐに嫌になったり、それを乗り越えて頑張りつづよう、と思えないのは至極当然のことだと言えます。幼児期の習い事で大切なのは、「動機づけ=モチベーション」であり、まず何より「楽しいという気持ち」、そして「自分で決めた」という自己決定感や「これは大事なことなんだ」という受容感、「自分がうまくできる」という有能感が重要だと書かれています。そういう意味で、習い事には親が得意なことや好きなことを選び、親も真剣に取り組むことが必要だ、ということです。

そして最後にもう一つ、習い事はあくまで生活の中にアクセントとして取り入れてください。これまでお伝えしたように、子どもは主体的な遊びの中で本当に多くのことを学びます。この時間が奪われてしまい、肝心の知性が育たなければ、どんなに自己調整学習力を育んであげたところで本末転倒となります。習い事は週に1日、多くて2日に留めておくことが大切です。

 

 

 

 

 

 

 

【おすすめ絵本】 『おっきょちゃんとかっぱ』

おっきょちゃんとかっぱ』

文:長谷川摂子 絵:降矢奈々 出版社:福音館書店

 

 

面白さ、冒険、ファンタジーの中に、ちょっぷりヒヤッとした怖さ。夏に読むのにぴったりの絵本です。

《概要》

おっきょちゃんは小さな女の子。裏の川で遊んでいると、カッパのガータロが呼んだ。お祭りのお客さんになれ。水の底のお祭りは楽しくて、おっきょちゃんはすっかり人間の頃のことを忘れてしまいます。でもある日、お人形を見つけてお母さんのことを思い出して、、、

《おすすめタイプ》

絵本には3歳くらいから、とありますが、ストーリー性が高いので、少し大きくなってからの方がおすすめです。5歳くらいから。男の子でも女の子でも。

《おすすめポイント》

どこか日本昔話めいた懐かしい感じの物語ですが、初版1997年と比較的新しい絵本です。長谷川摂子さんと降矢奈々さんのタッグは、もう一つの名作『めっきらもっきらどおんどん』でもお馴染み。

降矢奈々さんの絵がとても素敵。カラフルだけどどぎつくない柔らかな色調と立体感のある生き生きとした線、幻想的な絵は、眺めているだけで心が癒されます。

おっきょちゃんが手土産にきゅうりを持っていくところ、わざわざ浴衣に着替えて言ったのに、水に潜った途端にパンツ一丁になってしまうところ、人間の世界に戻るのに、ガータロと二人で食べた大きなスイカの中に隠れるところ、など、ユーモラスでほっこりするシーンもあれば、河童たちの賑やかなお祭りや、「ちえのすいこさま」に人間に戻る方法を聞きに旅をするところなど、子どもたちがドキドキワクワクする冒険も盛り込まれています。

そして、何と言ってもこの絵本の面白さは、河童や神隠しなど、日本の昔話がもつちょっとヒヤリとする怖さが隠されているところ。一見ひょうきんな風貌の河童が、実は人間の肝をとってしまう怖い妖怪だったり、おっきょちゃんが河童と遊んでいるうちに、自分の家族や家のことをすっかり忘れてしまって人間に戻れなくなってしまったり。こういうヒヤリとした怖さは、ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』に通ずるものがありますね。ただ、この絵本は、本当にこの怖さはさりげなーく触れているので、小さい子どもでも「怖い」とまでは感じないくらいになっているのが良いところ。でも、こういう隠された怖さに子どもはとても敏感です。それが、子どもたちを惹きつける物語の魅力の一つになっていることは間違いありません。

 

【育児本】『世界トップ機関の研究と成功率97%の実績からついに見つかった!頭のいい子にする最高の育て方』 ②

 

 

前回の記事の続きです。

本書では、ドイツの心理学者カール・ビューラー教授の説を参考にして、遊びを4つのカテゴリーに分けています。

 

1)想像遊び:イメージすること自体を楽しむ遊び。ふり遊び、ごっこ遊びなど

2)受容遊び:観たり聞いたりすることを楽しむ遊び。絵本の読み聞かせなど

3)機能遊び:体を使う遊び。走る、跳ぶなどの基本的な運動や、石蹴りや自転車など

4)創造遊び:イメージを形にする遊び。お絵描き、積み木、砂場など

 

そして、有名なロシアの心理学者ヴィゴツキーの著書『子どもの想像力と創造』などを参考にしながら、これらの遊びがのちに二つの重要な学習能力を培うのだ、と述べています。

想像遊び(ふり遊び・ごっこ遊び)+受容遊び(絵本など)=【抽象的思考力】

機能遊び(走る・跳ぶ)+創造遊び(お絵描き・積み木)=【空間認知能力】

  

ここで注目したいのは、小さな子どもが初めからこれらの遊びが一人でできるわけではない、ということです。

子どもはもともと、目に見えないものを想像するのが苦手です。でも目には見えないものを少しずつ想像できるようになり、その力を駆使しものがて遊ぶということは、子どもにとってはとても楽しいことなのです。そしてその楽しさが、抽象的な思考を楽しむ勉強の楽しさにつながるわけです。

子どもはまだ見えないイメージを操作することは苦手ですから、まずは見えないイメージを見える形にする力を鍛えるのが必須です。これは絵を描いたり、積み木で遊んだりする創造遊びで発達します。

そして、ヴィゴツキーの著書を参照しながらこのように結論づけています。

幼児は経験が貧弱だから、想像力も大人より貧弱だとキッパリ断言しています。子どもの想像力は大人よりもスゴイとよく耳にしますが、実際は子どもの想像力は大人が期待するほど優れてはいません。なぜなら、想像力には経験の数が必要だからです。

 前回の記事の最後で、《幼児は目に見えないことを想像することはできない》と繰り返し書きました。母親になってみてまずびっくりしたのは、「子どもが勝手に遊ぶものではない」ということです。それまでは、おもちゃがたくさんあれば子供は勝手に遊ぶものだ、暇さえあれば子どもは遊ぶことを考え出すものだ、と思っていたのです。だけど、著者のいう通り、実際は子供の想像力は大人が期待するほど優れてはいないのです。想像力を使って一人で遊ぶ、ということにも、経験が必要なのです。一番良いのは、少し年上の子供が間近で手本を示すことだと思います。しかし、一番上の子供とか、環境的にそれが難しい場合には、著者が言うように親がそれをやってあげる必要があるでしょう。

他にも、絵本の読み聞かせについては次のようなことを言っています。

子どもに内容の理解をテストするような絵本の読み聞かせはNG

絵本に触れることで子どもは絵本のストーリーをまさに体験しています。例えば、実際に公園のすべり台を滑った時に「速いね、どうしてスピードが出たのかな?」なんて言われたら興ざめですよね。

実際に体験している時に興ざめな声掛けはしてはいけないのと同様に、絵本を読む時も興ざめな声掛けをしないようにしましょう。ぜひ、子どもの感情を引き出すような声掛けをしてください。覚えておきたいのは、絵本で子どもの心が動くということです。

 

絵本の読み聞かせについては、『思考力・読解力・伝える力が伸びる ハーバードで学んだ 最高の読み聞かせ』で親子でやりとりをする読み聞かせ、というのが紹介されていました。また、佐藤ママの著書でも、繰り返し「絵本一万冊」で読み聞かせの大切さが強調されています。ただ、読み聞かせをあまりに「教育的観点」から親が頑張りすぎると、まさに著者のいうような「興ざめな声掛け」になってしまう危険がありますね。子どもが好きな絵本の種類にもよりますが、ストーリー性や世界観のある絵本を子どもが楽しんでいる時には、子どもが《絵本のストーリーをまさに体験している》ということを忘れないようにしたいですね。

次回の記事では、小さな子どもの学習方法や習い事について書きたいと思います

 

【育児本】『世界トップ機関の研究と成功率97%の実績からついに見つかった!頭のいい子にする最高の育て方』 ①

 

 

この本とても良かったです!基本的に「6歳までの育児法」を解説したものですが、子供が小学校に入ってから読んでも参考になることがたくさんあります。

 

著者のはせがわわかさんは、京都大学大学院工学研究科の修士課程を修めた後、大手メーカーの研究員として勤務する傍ら、一児の男子を育て、未就学児の知育、育児法を指導する「ハッピーエデュ」を立ち上げているそう。

 

前半は、結構当たり前の内容が多くて、妙に類型化された「パーソナル診断」とか、伝統的な「父親の役割」論的なところとか、なんか読みながらイマイチ、、、と思っていたんですけど(笑)後半から俄然、面白くなってきます。冒頭で《一見すると本書は、「他人と比べない」「いっぱい抱きしめる」など、オーソドックスな子育て法も多いかもしれません》と著者本人が言っている通り、オーソドックスな内容は確かに多いです。でも、そこに、海外の最先端の研究とか論文とかいった科学的エビデンスもしっかり取り入れられていて、読んでいてとても納得感があります。

 

例えば、「楽しいからやっていることに対してご褒美をあげると、そのこと自体への興味がなくなってしまう」「一度ご褒美をあげるご褒美がないと楽しめなくなる」と言った「アンダーマイニング効果」。これは、ボーク重子さんの『「全米最優秀女子高生」を育てた教育法 世界最高の子育て』『モンテッソーリ教育・レッジョ・エミリオ教育を知り尽くしたオックスフォード児童発達学博士が語る自分でできる子に育つ ほめ方・叱り方』などの本にも出てきました。「ご褒美をサプライズにすればアンダーマイニング効果は働かない」という実践的な内容も示してくれていて分かりやすいです。

 

それから、最近育児書でよく見かける「アンガーコントロール」(アンガーマネジメント)についても触れられています。イラッとしたら深呼吸する、とか、時間を置いクールダウンする、とかいうのはよくある指摘ですが、「怒り」そのものを科学的に分析してその対応方法を示しているのが面白かった。

 

怒りは、①怒った行為を判断し ②自分の思う「あるべき姿」と比べてふたつが異なる時に、③クールダウン機能が働かない、という3つのステップで発生するということです。つまり、このどれかが起こらなければ、怒りは爆発しないのです。

 

このステップに分けて原因分析するのがとても大事だな、と思いました。特に、怒りの主な原因が②なのか③なのか、というところ。③がメインならば、母親自身が寝不足とか疲れている、とか、子供と一緒にいる時間が長過ぎる、というところに主な原因があるのかもしれません。②のところならば、自分がそもそも考えている「あるべき姿」とはどんなものなのか?それを今の子供にどれだけ求めるべきなのか?を、一度立ち止まって考えてみるべきなのかもしれない。

 

本書の中で一番個人的に面白かったのは、幼児の頭や心の発達の仕方に即して、遊び方や学習法が考えられている、というところです。

例えば、小さい子供の「なぜなぜ期」に対して、親がすぐに回答を与えてはいけない。《自分で答えを探し、自分で答えに気づくから、科学は楽しい》《今、大人から教えられた答えを丸暗記してしまうより、たとえ間違っていても、自分で考え、想像する面白さに気づくほうが、100倍大切》。

注目すべきは、ここで著者が何度か、この時期の子供は「目に見えないことを想像することはできない」と触れていること。

しかもまだ今は、目の前にないことを想像することは苦手なので、正しい仕組みを理解することはなかなかできません

ですから例えば「どうして電車は速いの?」と聞かれた時、「電気の力でうんぬん」などという「目に見えない理由」について言われても、あんまり面白く感じません。「ふーん…」で終わってしまいます。

 

この、「幼児は目に見えない部分を想像することができない」というのは、『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』の本にも出てきました。小さい子供はハサミの柄だけを見てハサミだ、ということが分からない。この、幼児の認知の仕方を知ることは子育てでとても重要だな、と思います。これについては、次回の記事の「遊び」の部分で再度触れたいと思います。

 

 

 

 

【おすすめ絵本】 『としょかんライオン』

としょかんライオン

作:ミシェル・ヌードセン 絵:ケビン・ホークス 訳:福本友美子

出版社:岩波書店

 

 

子どもたちの大好きなライオンが、意外な場所、図書館で大活躍。ルールを守ることの意味を考えさせられる、深い味わいのある絵本です。

《概要》

ある日、図書館になんと本好きなライオンがやってきました。お話をもっと聞きたくて駄々をこねると、きまりを守ることに厳しい館長メリウェザーさんに怒られてライオンはしょんぼり。でも、それからは決まりを守って、毎日せっせと図書館に通い、子供たちと本を読んだり、お手伝いをしたり。ところがある日、メリウェザーさんが棚の上の本を取ろうとして足を滑らせ骨折してしまいます。ライオンは助けを呼ぶために、大きな声で吠えました。でも、「図書館では静かにする」という決まりを守れなかったライオンは、自ら図書館を去ってしまいます、、、

《おすすめタイプ》

少し長いので5、6歳くらいから。小学校低学年が自分で読む本としてもおすすめです。本好き、お話好きな子にぴったり。

《おすすめポイント》

これも大大大好きな絵本の一つ。

図書館にライオン。このなんとも意表をつく組み合わせが面白い。強くて怖そうなライオンが、子どもたちと一緒に大人しく絵本を読んでもらうのを聞いていたり、しっぽで本の埃を払ったり、高いところの本が取れるように背中に子どもたちを乗せてあげたり、メリウェザーさんの手紙の封をするために封筒を舐めなめしたり、という様子がなんとも可愛いんです。

ケビン・ホークスの絵がとても素晴らしくて、デッサン風の柔らかなタッチ、色調が温かい。それでいて、ライオンや人間の動きや表情など、とてもリアルに繊細に描き分けています。

前半の可愛らしいほのぼのとした感じから一転、メリウェザーさんが骨折してしまい、助けを呼ぶために「図書館では静かにする」という決まりを破って、大声で吠えるライオン。そして、しょんぼりと去っていくライオンの哀しい姿、館員のマクビーさんがライオンを懸命に探すところなど、「どうなっちゃうんだろう」という子どもたちのドキドキするストーリーが展開します。

最後には、マクビーさんが「おおごえでほえてはいけない。ただし、ちゃんとしたわけがあるときはべつ」とライオンに訳を話し、図書館にライオンが戻ってきたのを聞いた館長のメリウェザーさんは、思わず「図書館で走ってはいけない」という決まりを破って駆け出してしまう、というオチも素敵。

たまには、ちゃんとしたわけがあって、きまりをまもれないことだって、あるんです。いくらとしょかんのきまりでもね。

この最後の一文は、さらっとしているけど、とても深い。実際は、「きまりをまもれないこともある」というよりも、「きまりはつねにまもらないといけない」と子供に教えた方が大人は楽ですよね。「ちゃんとしたわけ」を子どもが自分で判断するのは難しいし、もっと言うと、大人だって誰もが納得する正しい判断ができるわけじゃない。でも、敢えてそういう可能性を提示して子どもに考えさせる、というのは、とてもとても大事なことだと思います。「きまりはつねにまもらないといけない」と教え込んだ瞬間に、子どもは思考停止してしまいます。

こういうお話というか、価値観は、日本の伝統的な絵本やお話の中には中々なくて、海外の絵本を読む醍醐味だなあ、と思います。よく言われるように、日本は「きまりをまもるたいせつさ」についてはすごく敏感だけれど、きまりをはみ出したり例外についての判断を迫られると弱い、というところがどうしてもありますよね。だからこそ、こういう絵本で、小さい頃から考える訓練をしておくと良いかなあ、と思います。こういう時には、親が「正解」を用意する必要は全くなくて、親も一緒に「どうしたらいいのかなあ」と考えて、時には答えが出なくてもいい、という体験も大事なのではないでしょうか。

 

【教育本・教養本】 『東大読書』

 

 出ました、最近よくある、東大のブランド力を全面に押し出したこのタイトル(笑)

著者が現役東大生で、東大で書評誌の編集長をしているらしいのですが、冒頭から《周りの東大生たちもみんな、僕が発見したのと同じような読み方をしていた》《東大生は何事においても「受け身」を嫌う》と、まるで自分が東大代表のような、主観的な意見が散見されます。だからと言って、きちんと東大生一般に統計を取ったり分析したりしたわけでは全くない。「東大」ネームについては、ただの客寄せとして使われているので、その辺りはよくよく承知して読む必要があります。当たり前ですが、東大生の大多数がこんな読書術を実践しているわけでも(少なくともそれが統計的に証明されているわけでも)、この読書術によって東大に合格できるわけでもありません。そもそも、この著者が東大生データの元にしているらしき《東大で45年続く書評誌『ひろば』》について、私自身は見たことも聞いたこともなかったし、文学部の私がそうなのだから、その存在を全く知らない東大生は多いと思います。

 

で、東大については殆ど関係ないな、という感じの内容ですが、中身としては、オーソドックスな「読書術」「アウトプット術」「記憶整理術」を著者なりにミックスし、分かりやすくまとめられています。

「〜読み」という名称で、順を追って読み方について説明していますが、大きく分けると「効率良く読む」と「深く読む」の2つの方法に分けることができます。

「効率良く読む」ための方法として推奨されているのが

  • 「装丁読み」 あらかじめ本の概要を推測、仮説を作ってから読む
  • 「取材読み」 著者の感情や意図を推測死、質問しながら読む
  • 「整理読み」 本全体の構成や論理展開を追いながら要旨を整理する

また、「深く読む」ための方法として推奨されているのが

  • 「検証読み」「パラレル読み」 似たテーマの本を2冊以上同時に読んで、記憶や知識を定着させると共に、多面的な思考力を育む
  • 「クロス読み」 複数の本を読んでいく中で議論が分かれる「交錯ポイント」を見つけて検証することで、読解力と思考力を高める
  • 「議論読み」 自分なりの要約を作る、仮説や質問との整合性を検証するなどしてアウトプットをする

といったところになるでしょうか。

まあ、この手の「読書術」は読書好きの人からすると「そんなこともうやってるよ」「いいから好きに読ませてよ」という感じもあるんですけども(笑)ただ、あらかじめ想定される要旨や疑問に思ったことなどを付箋にまとめておく、とか、面倒くさい気もしますが、読みづらくて長い本には、こういう手法を取り入れてもいいのかな、と思いました。

個人的に印象に残ったのは、記憶と知識に関わる部分で

例えば、「検証読み」の重要性について説明したところで、心理学者のヘルマン・エビングハウスの「エビングハウス忘却曲線」について触れていて

実は、ただ復習するよりも、別の角度や別の視点・別の文章で出てきた、いわば「未知の情報」の中に「何度も見ている情報」があったほうが、海馬は「重要な情報だ」と判断しやすいのです。「新しい角度からの復習」のほうが効果があるということです。

まったく同じ情報でも、違う場所・文脈の中にあったほうが、記憶に残りやすいんです。

 

これは、受験の勉強方法などでも活用できる部分です。『「灘→東大理Ⅲ」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方』の「佐藤ママ」や『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』の「おやじ」が実践していた勉強法も、例えば「るるぶ」や実際の旅行で地理の知識を、とか、漫画や映画作品で歴史の知識を、補強しています。同じパターンの問題や勉強法の繰り返しではなく、受験で問われる知識を全く違う文脈に置いて学習させると、記憶が定着し、点や線でなく面的な知識となって、結果として安定的かつ重層的な知識が身につく、というわけです。

 

また、著者はこんなことも言っています。

 

突然ですが、みなさんにとって、本を読んでいていちばん楽しい瞬間はどんなときですか?

知的好奇心がくすぐられる内容に出会ったときでしょうか?それとも、日常生活の疑問が解消されたときでしょうか?

僕の場合は、「前に読んだ内容と似た1節を見つけたとき」です。

「あ!この意見は、あの本でも読んだことがあるぞ!」「この話って、あっちの分野だけの話かと思ってたら、この分野でも応用されているんだ!」のように、別の本の内容に共通点を発見したときがいちばん楽しいと感じます。

周りの東大生に聞いたところ、多くの人が僕と同じように「共通点を見つけた瞬間が楽しい」と言っていました。

「周りの東大生に聞いたところ」というのがいちいちうるさいですが(笑)、これは、教養主義とか、リベラル・アーツ的な考え方に共通する「楽しさ」だと言えます。もしかしたら、こういうものを人間が「楽しい」と感じるのは、脳の記憶の仕方と関わりがあるのかもしれませんね。そして、脳の記憶の仕方とか、「共通点」や「関連性」を見出す働きというのは、人間の脳が保つ根源的な力の一つのような気がします。おそらく、コンピューターがそういった微妙な「関連性」や「類似」を認知するのは非常に難しいと思われるからです。