受験にも知育にも興味ない 東大卒ママの育児日記

受験にも知育にも興味ないズボラな東大卒の二児の母が、おすすめの育児書や絵本を紹介したり、教育についての思いをつらつらと語ります

【おすすめ絵本】 『ちょっとだけ』

ちょっとだけ

作:瀧村有子 絵:鈴木永子 出版社:福音館書店

 

 

お兄ちゃんお姉ちゃんになるのは、小さい子供にとって最大の心理的ドラマ。その気持ちに寄り添った、子どももお母さんも優しい気持ちになれる絵本。

《概要》

なっちゃんのおうちに、あかちゃんがやってきました。ママのスカートを「ちょっとだけ」つまんで、牛乳をコップにひとりで入れるのも「ちょっとだけ」成功して、ママが押してくれなくても自分でブランコを「ちょっとだけ」揺らして、、なっちゃんはちょっとずつ頑張って「おねえちゃん」になっていきます。でも、眠たくなっちゃった時には、どうしてもママに甘えたくなっちゃう。なっちゃんはママに「ちょっとだけ」抱っこして、と頼みます、、

《おすすめタイプ》

読んであげるなら3歳くらいから。ただ、下のおすすめポイントでも説明するように、下の子ができたばかりの頃よりも、6歳以降など、上の子が少し大きくなってから読むのがおすすめです。

《おすすめポイント》

 『ピーターのいす』の記事で書いた通り、小さな子供にとって、下の弟や妹が生まれる、というのは短い人生で最大の出来事です。我が家では、上の娘と下の息子は2歳半差。ちょうど弟が生まれたばかりの頃、里帰りしていた実家の近くの美容院に娘を連れて行きました。イヤイヤ絶頂期できかんきの顔をして不機嫌にしていた娘に、5人の子供を産んだママさんが何気なく「おやおや、人生最初の試練ってわけね」と言い聞かせていたのが印象的でした。弟や妹ができて嬉しい気持ち、今まで独り占めしていたパパやママを取られてしまう気持ち、おねえちゃんやお兄ちゃんになったんだという誇らしい気持ち、いろんな感情が交錯して複雑な時ですね。

この絵本では、主人公のなっちゃんが、赤ちゃんのお世話が忙しくてかまってもらえない間に、色んなことを「ちょっとだけ」自分でやってみる、というストーリーです。我慢の連続でかわいそうなくらいなのですが、最後の最後で、「ちょっただけだっこして」と甘えてしまうなっちゃんですが、「ちょっとだけじゃなくていっぱいだっこしたいんだけどいいですか?」と言うママの言葉に救われます。

ブログの記事を書くにあたり、この絵本の情報をグーグルで検索していると「ちょっとだけ 絵本 嫌い」とかいうキーワードが上位に出てきて、おや、と思いました。検索記事を覗いて見ると、「母親が子供に我慢をさせ過ぎていて嫌だ」とか「上の子にこの絵本を読んであげると嫌がる」などといったコメントが出てきます。確かに、この絵本のなっちゃんは、初めからずいぶんいい子にしていますし、現代の感覚からすると、小さな子供に自分で牛乳を注がせたり、公園に一人で行かせたり、赤ちゃんがいるからってほったらかしすぎでは?と思えるところもあるかもしれません。ただでさえ複雑で微妙な時期にこの絵本を読み聞かせられたら、「なっちゃんみたいに我慢しなさい」という親からの押し付けのように感じられてしまう子もいるかもしれません。

実は、我が家も、この絵本はだいぶ前に買ってあったのですが、上の子の反応もイマイチだったので、しばらく放置してありました。私も、良いお話だとは思うけれど、子どもが読みたがらない絵本を読んでも仕方ないと思ってそのままにしていました。ところが、それからもう何年も経ったある日、寝る前の読み聞かせで小学校2年生になった娘が選んだ本がこれだったのです。選んだ時には、娘も「あ、こんなのあったけど読んでないな」と軽い気持ちだったのだと思いますが、読んで聞かせていると、ちょっと様子がおかしい。なんだか、目のあたりをゴシゴシ擦っています。えー、もしかして泣いてる!?と内心びっくりしましたが、そうっとしておきました。

読み終わってから「弟とかさー妹とかさーいると大変なんだよ!」と娘がポツリ。「そうだよね、お兄ちゃんお姉ちゃんは大変なんだよね」と頷きました。上の娘は母性愛というのか、義侠心というのか、小さい頃から弟を可愛がったり庇ってあげたりする気持ちが強くて、兄弟喧嘩で苦労したこともあまり無いし、下の息子に至っては、マザコンよりもシスコンを心配するほどお姉ちゃん好きなので、「なるほど、これが一姫二太郎の良さか」などと、母は都合よく解釈していたのですが、やっぱりそれなりに上の子は我慢していたんですね(←当たり前)。

ちょうどこの絵本のなっちゃんと同じくらいの時には、まだ、自分の気持ちや立場が理解しきれていなかったのかもしれません。こうやって、もうずっと大きくなってから初めて、あの頃の複雑な気持ちが整理できたり、受け止めたりできる、ということもあるんだな、と思いました。

物語の力というのはとても大きくて、登場人物に代わって擬似体験することで、自分の気持ちが浄化される、という作用は大人にもあります。もし、お兄ちゃんお姉ちゃんになったばかりで気持ちが追いついていない時には、もう少し時間が経ってからこの本を読み聞かせてあげる、というのも良いと思います。

色々思い出したお姉ちゃんをよそに、マイペースであくびなんかして聞いている弟くんには、「お姉ちゃんはこんなに大変だったんだよ」と言い聞かせましたけど、少しは響いているのかしら、、、

 

【おすすめ絵本】 『おっきょちゃんとかっぱ』

おっきょちゃんとかっぱ』

文:長谷川摂子 絵:降矢奈々 出版社:福音館書店

 

 

面白さ、冒険、ファンタジーの中に、ちょっぷりヒヤッとした怖さ。夏に読むのにぴったりの絵本です。

《概要》

おっきょちゃんは小さな女の子。裏の川で遊んでいると、カッパのガータロが呼んだ。お祭りのお客さんになれ。水の底のお祭りは楽しくて、おっきょちゃんはすっかり人間の頃のことを忘れてしまいます。でもある日、お人形を見つけてお母さんのことを思い出して、、、

《おすすめタイプ》

絵本には3歳くらいから、とありますが、ストーリー性が高いので、少し大きくなってからの方がおすすめです。5歳くらいから。男の子でも女の子でも。

《おすすめポイント》

どこか日本昔話めいた懐かしい感じの物語ですが、初版1997年と比較的新しい絵本です。長谷川摂子さんと降矢奈々さんのタッグは、もう一つの名作『めっきらもっきらどおんどん』でもお馴染み。

降矢奈々さんの絵がとても素敵。カラフルだけどどぎつくない柔らかな色調と立体感のある生き生きとした線、幻想的な絵は、眺めているだけで心が癒されます。

おっきょちゃんが手土産にきゅうりを持っていくところ、わざわざ浴衣に着替えて言ったのに、水に潜った途端にパンツ一丁になってしまうところ、人間の世界に戻るのに、ガータロと二人で食べた大きなスイカの中に隠れるところ、など、ユーモラスでほっこりするシーンもあれば、河童たちの賑やかなお祭りや、「ちえのすいこさま」に人間に戻る方法を聞きに旅をするところなど、子どもたちがドキドキワクワクする冒険も盛り込まれています。

そして、何と言ってもこの絵本の面白さは、河童や神隠しなど、日本の昔話がもつちょっとヒヤリとする怖さが隠されているところ。一見ひょうきんな風貌の河童が、実は人間の肝をとってしまう怖い妖怪だったり、おっきょちゃんが河童と遊んでいるうちに、自分の家族や家のことをすっかり忘れてしまって人間に戻れなくなってしまったり。こういうヒヤリとした怖さは、ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』に通ずるものがありますね。ただ、この絵本は、本当にこの怖さはさりげなーく触れているので、小さい子どもでも「怖い」とまでは感じないくらいになっているのが良いところ。でも、こういう隠された怖さに子どもはとても敏感です。それが、子どもたちを惹きつける物語の魅力の一つになっていることは間違いありません。

 

【おすすめ絵本】 『としょかんライオン』

としょかんライオン

作:ミシェル・ヌードセン 絵:ケビン・ホークス 訳:福本友美子

出版社:岩波書店

 

 

子どもたちの大好きなライオンが、意外な場所、図書館で大活躍。ルールを守ることの意味を考えさせられる、深い味わいのある絵本です。

《概要》

ある日、図書館になんと本好きなライオンがやってきました。お話をもっと聞きたくて駄々をこねると、きまりを守ることに厳しい館長メリウェザーさんに怒られてライオンはしょんぼり。でも、それからは決まりを守って、毎日せっせと図書館に通い、子供たちと本を読んだり、お手伝いをしたり。ところがある日、メリウェザーさんが棚の上の本を取ろうとして足を滑らせ骨折してしまいます。ライオンは助けを呼ぶために、大きな声で吠えました。でも、「図書館では静かにする」という決まりを守れなかったライオンは、自ら図書館を去ってしまいます、、、

《おすすめタイプ》

少し長いので5、6歳くらいから。小学校低学年が自分で読む本としてもおすすめです。本好き、お話好きな子にぴったり。

《おすすめポイント》

これも大大大好きな絵本の一つ。

図書館にライオン。このなんとも意表をつく組み合わせが面白い。強くて怖そうなライオンが、子どもたちと一緒に大人しく絵本を読んでもらうのを聞いていたり、しっぽで本の埃を払ったり、高いところの本が取れるように背中に子どもたちを乗せてあげたり、メリウェザーさんの手紙の封をするために封筒を舐めなめしたり、という様子がなんとも可愛いんです。

ケビン・ホークスの絵がとても素晴らしくて、デッサン風の柔らかなタッチ、色調が温かい。それでいて、ライオンや人間の動きや表情など、とてもリアルに繊細に描き分けています。

前半の可愛らしいほのぼのとした感じから一転、メリウェザーさんが骨折してしまい、助けを呼ぶために「図書館では静かにする」という決まりを破って、大声で吠えるライオン。そして、しょんぼりと去っていくライオンの哀しい姿、館員のマクビーさんがライオンを懸命に探すところなど、「どうなっちゃうんだろう」という子どもたちのドキドキするストーリーが展開します。

最後には、マクビーさんが「おおごえでほえてはいけない。ただし、ちゃんとしたわけがあるときはべつ」とライオンに訳を話し、図書館にライオンが戻ってきたのを聞いた館長のメリウェザーさんは、思わず「図書館で走ってはいけない」という決まりを破って駆け出してしまう、というオチも素敵。

たまには、ちゃんとしたわけがあって、きまりをまもれないことだって、あるんです。いくらとしょかんのきまりでもね。

この最後の一文は、さらっとしているけど、とても深い。実際は、「きまりをまもれないこともある」というよりも、「きまりはつねにまもらないといけない」と子供に教えた方が大人は楽ですよね。「ちゃんとしたわけ」を子どもが自分で判断するのは難しいし、もっと言うと、大人だって誰もが納得する正しい判断ができるわけじゃない。でも、敢えてそういう可能性を提示して子どもに考えさせる、というのは、とてもとても大事なことだと思います。「きまりはつねにまもらないといけない」と教え込んだ瞬間に、子どもは思考停止してしまいます。

こういうお話というか、価値観は、日本の伝統的な絵本やお話の中には中々なくて、海外の絵本を読む醍醐味だなあ、と思います。よく言われるように、日本は「きまりをまもるたいせつさ」についてはすごく敏感だけれど、きまりをはみ出したり例外についての判断を迫られると弱い、というところがどうしてもありますよね。だからこそ、こういう絵本で、小さい頃から考える訓練をしておくと良いかなあ、と思います。こういう時には、親が「正解」を用意する必要は全くなくて、親も一緒に「どうしたらいいのかなあ」と考えて、時には答えが出なくてもいい、という体験も大事なのではないでしょうか。

 

【おすすめ絵本】 『しろいうさぎとくろいうさぎ』

しろいうさぎとくろいうさぎ

文・絵:ガース・ウィリアムズ  訳:まつおかきょうこ

出版社:福音館書店

 

 

個人的に一番好きなとっておきの絵本です。絵の美しさ,うさぎの可愛いらしさ,文章,ストーリー何度も読んでいろんな角度から味わいたい絵本

《概要》

しろいうさぎとくろいうさぎは二匹で楽しく暮らしています。ある日、いつものようにうまとびしたり、ひなぎくとびをしたり、かくれんぼをしたり、楽しく過ごしている最中、くろいうさぎだけが何か考え込んでいて元気がありません。しろいうさぎがどうしたの?と聞くと、やっとくろいうさぎは答えます。「いつも、いつまでも、きみといっしょにいられますように」そんなこと考えたことのなかったしろいうさぎはびっくり!でも、しろいうさぎだって気持ちは一緒なんです。

《おすすめタイプ》

絵を中心に楽しむなら3歳くらいから。読み聞かせで内容を楽しむには4、5歳くらい。自分で読めるようになってから読む本としてもおすすめです。

《おすすめポイント》

今までおすすめ絵本を紹介してきたのも30冊を超えました。紹介したものはどれも本当に大好きなものばかりなのですが,私が本当に一番大好きな絵本はどれかと言われれば、これです。

国学図書館協議会日本図書館協会はもちろん,いろんなところから選定図書として選ばれている定番中の定番です。今まで敢えて紹介してこなかったのは、母親になってから読み聞かせる、という観点から選んだのではなくて、本当に私が子供の頃に一番好きだった絵本だから。でも、やっぱりいいものはいいし、親になった目で読み返しても素敵だな、と思うので紹介することにしました。

何が大好きだったかって、とにかく絵です。もう二匹のうさぎが可愛いのなんのって、子供心にもそれが強く印象に残っています。ぬいぐるみや動物好きな子どもであれば、それだけでとっかかりには十分なのではないでしょうか。目をまん丸くした時の表情、くろいうさぎの考え込んでいる様子、二匹で楽しく遊んでいる姿。うさぎのふわふわした毛、淡い色調で描かれた森や原っぱ、遠景と近景、可愛らしさとリアリティが絶妙にミックスされていて、どのページを切り取っても素晴らしいの一言。

どうしてこの絵がこんなに好きなのかは分かりません。小さい頃一番大好きだったこの絵本の絵を描いていたガース・ウィリアムズが、私の読書好きの大元となったローラ・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』(福音館文庫版)の挿絵を描いていたのだ、と知ったのはずっと後のことです。もちろん、ワイルダーの文章と恩地三保子さんの翻訳が素晴らしかったから夢中になって読んだのだけれど、潜在的にガース・ウィリアムズの挿絵も影響していたのかな、なんて思いました。

個人的に絵のことばかりになりましたが、もちろん、文章もお話もとても良いのです。大人になってから読んでみると、全てのセリフに「くろいうさぎはいいました」とか「しろいうさぎはききました」といった文章がついていて、小さな子どもにも分かりやすい、ゆるやかなテンポで話が進んでいくのも良いなあ、と気づきました。

少しまどろっこしいくらいですが、いつもの遊びと暮らしを一つ一つなぞりながら、そのたびに考え込んでしまうくろいうさぎの様子が、子どもの心に少しずつ刻まれていくんですよね。いつもの暮らしがとても充実して楽しければ楽しいほど、「ずっとこのままいれるんだろうか」「この幸せを失いたくない」と不安になってしまう、そんな複雑な心理も実によく表しているなあ、と感心してしまいます。

ひなぎくとび」「クローバーくぐり」「きんぽうけ」「どんぐりさがし」といった言葉、「あさのひかりのなかへ、とびだしていきました」「しろいうさぎは、やわらかなしろいてをさしのべました」といった少し古風な美しい言い回しも素敵です。

それから、今になって読んでみると、「けっこんしてしあわせにくらしました」というおとぎ話の典型的要素に、ジェンダー色が全く感じられないのも魅力のひとつだと思います。日本語訳だと、どうしても一人称の関係から」くろいうさぎ=僕=男の子」「しろいうさぎ=わたし=女の子」という図式が透けて見えますが、元々の英語「I」だけだったら、どちらがオスとかメスとか、全く分からないですよね。結婚しても二匹は一緒にたんぽぽを食べたり、ひなぎくとびをしたりして楽しく暮らすだけ。そこに妙なジェンダー的役割分担は介在しません。大好きなパートナーと一緒にいつまでもいたい、その気持ちがあるだけ。そのシンプルさが、実はとても貴重だな、と思うのです。

【おすすめ絵本】 『3びきのかわいいオオカミ』

3びきのかわいいオオカミ』

文:ユージーン・トリビザス  絵:ヘレン・オクセンバリー

訳:こだま ともこ 出版社:冨山房

 

 

小さい子供でもパロディ」がもつ面白さを実感できる新しい名作です。

《概要》

3びきのかわいいオオカミは、お母さんに言われて家を建てます。3びきで協力して、頑丈なレンガのお家を建てれば、わるいおおブタだって怖くない!ほら、わるいおおブタが息を吹きかけてもびくともしません、、、ところが!わるいおおブタはなんと、ハンマーを持ってきてレンガの家をめちゃくちゃに壊してしまいます!コンクリートの家を建てても電気ドリルで、鉄筋コンクリートの頑丈な家を建ててもダイナマイトで壊されてしまいます。どうしたらいいんだろう?オオカミたちは、全然違うものでお家を建てることにしました。そしたらあら不思議、こわーいおおブタが、、、

《おすすめタイプ》

 「3びきのこぶた」の筋を理解している子。5歳くらいから。動物がたくさん出てくるので動物好きな子にも。派手なドリルやダイナマイトなんかも出てくるので、ゲームや戦隊好きな男の子も楽しめます。

《おすすめポイント》

これも、子どもが「学校で読んで面白かったから」と紹介してくれた本です。全国学図書館協議会日本図書館協会の選定図書に選ばれていますが、日本の初版は1994年ですので、ママ達が子どもの頃にはまだあまり知られていなかった絵本ですね。

概要を読んでお気づきの通り、これはズバリ、有名な『3びきのこぶた』のパロディです。『3びきのこぶた』は、保育園や幼稚園でも劇やペープサートで何かと取り上げられるので、子どもたちには絶対お馴染みのストーリー。この絵本のすごいところは、その小さい子供がよく知っている物語に目をつけて、「パロディのもつ面白さ」を体験できるようになっていることだと思います。

のっけから、かわいいオオカミがこわいブタに気をつけなきゃ、なんて、「あれ!逆じゃない!?」と、おかしな感じ。そして、オオカミたちはこぶたと違って最初から頑丈なレンガのお家を作り始める。「それじゃブタが来ても家が壊れないよ、どうするんだろう?」と読んでもらう子どもたちも興味津々。

で、そこで、まさかのブタがハンマーでレンガの家をぶっ壊してしまうシーン!これは、読んでいるママも衝撃的でした(笑)もうここで子どもたちは大ウケ。そこだけ取り出したら笑えないと言うか、怖がってしまいそうなシーンですが、なぜこんなにウケるかと言えば、それは、子ども達の頭の中に『3びきのこぶた』の「レンガのおうちは大丈夫」という筋が刻み込まれているから。その筋通りにいかない!という意外さ=「パロディの面白さ」があるからこその面白さなわけです。

その後も、これでもかと頑丈な家を建てるオオカミくん達に対し、ブタが取り出すのは電気ドリルにダイナマイト。とにかくこのブタが「極悪」なんです。もうね、出てきた瞬間から面構えがワルイワルイ。絵本史上稀にみる極悪ブタだと思います(笑)それがまた、『3びきのこぶた』との対比で余計に笑えるんですけど。

最後は「頑丈な家を建てる」方向に頑張るのではなく、発想の転換をする!と言うのも面白いところです。ここでも『3びきのこぶた』の常識を覆すわけですよね。で、極悪のブタが、お花の家の香りと美しさに急に可愛くなって踊り出す、というチグハグさも笑えます。

とにかく、これを初めて寝る前に読んだ時には子ども達が笑って興奮し過ぎてしまい、『ブタヤマさんたらブタヤマさん』以来の「寝る前に読んではいけない本」に認定されました。でも、子どもがそれだけ笑ってしまうのは、なんといってもそこに「パロディの面白さ」があるからで、そこは「広がり」がある重要な部分だと思います。

何度も言うように、『3びきのこぶた』のストーリーがポイントなので、子どもがそれを余り意識していないようだったら、「あれ、オオカミがブタを怖がってるなんて反対だね」とか「レンガのお家だったら壊れないはずだよね」とか、読みながらママが言ってあげてはどうでしょうか。読んでもらう子どもたちの面白さが増すと思いますよ。

【おすすめ絵本】 『数ってどこまでかぞえられる?グーグルのもとになったことば』

数ってどこまでかぞえられる?グーグルのもとになったことば』

作:ロバート・E・ウェルズ 訳:せなあいこ 出版社:評論社

 

 

《概要》

1本のバナナから始まって、1に0をひとつつけたら10になる。バナナが100本、ワシが100羽、100匹のペンギンがそれぞれ10個のアイスを持っていたらどう?天文学的数字の「グーゴル」に届くまで、ユニークで自由な想像力を楽しみながら、10進法と大きな数のイメージが学べます。

《おすすめタイプ》

内容は少し難しいので最低でも5歳くらいから。数に興味を持ち始めたり、算数を習い始めた頃に読むのがおすすめ

《おすすめポイント》

理系脳、文系脳、というのが科学的にどこまで証明できるものなのか、専門的な知識は全くないのですが、とにかく私は骨の髄まで文系タイプを自認してます。小学校の頃から算数が苦手でした。(よく、「東大だから数学できるんでしょ」と言われるのですが、高校1年の頃から私立文系と固く心に決め、東大には後期試験一本で臨んだ私は、当時のセンター試験ですら数学を受験しておりません)

だから、理系に憧れがあって、宇宙人な理系男子を四苦八苦で子育てする!という事態を、密かに恐れながらも楽しみにしてたりしたのですが、、、蓋を開けたら、上の娘も下の息子も、幼児期からしてバリバリの文系タイプ。なので、二人とも言葉や文字の習得には全く苦労しないし、コミュニケーションもすごく取りやすいので、まあ、母的には想定内、というか、楽っちゃ楽なんですけど(笑)旦那も超文系なので、やっぱり遺伝的なものは大きいのかなあ、と思いつつ、せめて絵本で算数の楽しさに近づけるものがないかなあ、と探して見つけたのがこれ。

1本のバナナから始まって、それに0がひとつずつ増えたら一体どうなる?100羽のペンギンが10個ずつアイスクリームを持っていたら?1000個ずつマシュマロを入れたバスケットが100あったら?恐竜の時代は6500万年前、太陽の年は50億年、太陽から一番近い星までの距離は40兆キロ。ゼロが100個ついた天文学的数字「グーゴル」まで、子どもが喜びそうな自由なイメージと、恐竜や天体などの科学的知識を交えながら辿っていけます。

子どもたちは、大体5、6歳くらいから「大きな数」に興味を持ち始めて「いちまんおく」とか「いちおくまん」とか言い始めるのもこの時期のあるあるですよね。子どもだけでなく、大人でもお金以外で100万とか1億とかの大きな数字をイメージするのって、かなり難しいことです。有名な「Google」が「グーゴル」からきているなんてことも、私は全然知りませんでした。

大人でも「なるほどー」と思いながら、子どもと一緒に読み進めていくのがとても楽しい本です。最近では、大きい数字だけでなく「Google」の方を小耳に挟んで、そちらから興味を持つ子どもも多いかもしれませんね。

【おすすめ絵本】 『ねこざかな』

ねこざかな

作・絵: わたなべ ゆういち 出版社:フレーベル

 

絵も歌も言葉もお話も、子どもの心からの「楽しい」が詰まった、ナンセンス絵本の傑作。

 

 

《概要》

ある日、食いしん坊の猫が大きな魚を釣り上げた。猫が魚を食べようとしたら、反対に大きな魚は猫をパクリと飲み込んでしまいます。お互いに「けしからん!」と喧嘩していた猫と魚は、いつの間にか魚が猫を口に入れたまま「ねこざかな」として遊び始めます。

《おすすめタイプ》

ストーリーを理解しなくても2歳くらいから楽しめます。長いストーリーや絵本が苦手な子にもおすすめ。

《おすすめポイント》

長新太さんの『ブタヤマさんたらブタヤマさん』の記事でも紹介したように、子どもは、大人からすると「何それ!」というようなナンセンスやシュールさが大好物だったりします。

猫が魚を飲み込んで合体して「ねこざかな」。もういきなり、「何じゃそりゃ」という感じですが、この絵本も、母親の思惑はお構いなく、子どもが選んで借りてきて、すっかりお気に入りになってしまった絵本の一つです。なんと、ミュンヘン国際児童図書展優秀絵本やボローニャ国際児童図書展グラフィック賞など、数々の賞を受賞した名作だった、なんて知ったのは後から。シリーズでいくつも作品があって、どれも最強にくだらないのですが(笑)、少しでも物語性があったりためになる絵本を、、、などという密かな親の野望をものともせず、とにかくうちの子どもたちは喜んで読んでいました。

 

ストーリーはあってないような感じですが、とにかく発想が面白い。ユーモラスでカラフルな絵や、歌や言葉遊びなど、子どもが素直に楽しめる要素がいっぱい詰まっています。この作品には出てきませんが、『ねこざかなのおしっこ』とか『そらとぶねこざかな』とか、子どもたちが大好きな「下ネタ」も出てきたりします(笑)

 『ブタヤマさんたらブタヤマさん』の記事でも書きましたが、大人の常識には包容しきれないこのナンセンスとシュールさ。その自由奔放さが、子どもの想像力と創造力の要なんですよねえ。子どもってほんと、親の予想の斜め上を行く回答や反応を示したりしますが、そこでイライラしてはいかんのです。だって、大人の想定内で行動する子どもなんて、本当は気持ち悪いんですもの。そうやって、母は自分に言い聞かせながら、内心「なんじゃそりゃ」と思いつつ、今日もナンセンス絵本を読むのでした。